リョクVS玲央
「ルールはいつもどおり。ジャッジはセルフでお願いね。開始の合図だけ出してあげるから。」
リラがフィールド外から声をかけた。玲央が了解の合図をし向き直る。未だに不服そうなリョクをまあまあとなだめ、「ほんなら始めよかー」と開始の合図を促した。
「(玲央さんとは相性が悪いんですよね…圧倒的に不利…とはいえ毎回相性のいい相手と当たるわけもないんですけど…。)」
「考え事とは余裕やなー。」
「まさか。あなた相手に油断も隙もできたもんじゃないですよ。」
悪態をついたところでリラから合図が出された。まずリョクが先程と同じように種を落とした。トントンと叩きしゅるっとツタが伸びる。それと同時に玲央も腰につけていた鞭に手をかけた。が、それを静止するようにリョクがツタを操り手を弾く。
「いったあ。なんや乱暴やなあ。」
「どの口がそんなことを言うんですか。」
手を休ませることなく今度は水の球体を作り玲央に向かって投げつける。ひょいひょいとそれを避け今度こそしっかり握った鞭をふるった。それを飛び退き避けたリョクは冷静である。しかし、先ほどと同じような笑顔は一切見られなかった。一方、玲央は余裕の表情でじわじわと追い打ちをかけてくる。
「(今日はホワイトタイガーを連れていないだけましですが…大鷲はいつでも呼べるでしょうし油断はできませんね…。)」
ふうむと頭をフル回転させる。それを邪魔するかの如く玲央が鞭をふるった。リョクはなるべく距離を縮められないように細心の注意をはらう。あの鞭に捕まれば電流を流され終わりだ。それは彼が学院にいる間に嫌というほど学んでいる。そういえば、何度か手合わせをしたことはあるが一度も勝てたことはないな、と若干消極的な気持ちが浮かんだ。が、すぐに振り払った。
「(今日は、勝たせてもらいます…!)」
「お、やる気でてきたん?ほんなら俺ももうちょい本気だそかな。」
ふいにリョクの足元が割れ、突然姿を露わにした植物に足場をとられた。バランスを崩しかけるがなんとか持ち直しその場から飛び退く。チラリと後ろを確認すればフィールドを囲む柵が数メートルのところに見られた。このままではまずい。頭では分かっているが打開策が見当たらない。水の球体を投げたところでこの人なら簡単に避けてしまうだろう。確実に当てるためにはやはり動きを封じる必要がある。リョクはふうと一息つきトントンと地面を叩いた。が、何も起こる様子はない。
「(大方下やな。)」
と、突然リョクが動いた。さっきまで間合いをとっていたのとは真逆に一気に間合いを詰めてきた。それにすばやく反応した玲央も飛び出した。2人の影が重なる時、玲央がリョクの腕を掴む。それを振りほどこうともせずリョクはいつの間に作っておいたのか球体を近距離から当てにきた。しかし、それを読んでいた玲央は植物を操りそれを防ぐ。そして、
「次は下、やろ?」
「…正解。」
下から飛び出してきた幹をリョクの体ごと避ける。と、その時、リョクが突然玲央に掴まれている腕を引いた。うおっと声が漏れる。
「小細工が聞かないのは重々承知ですからね。」
玲央の仰け反った体を蹴り上げた。まさか自身の身を挺しての攻撃をするとは思わなかったのか、背中に衝撃を受け投げ出される玲央。しかしさすが卒業生。地面に叩きつけられることはなくひょいっと体制を立てなおした。
「いたた…ちょおほんまに今日乱暴ちゃう?」
「油断大敵です。」
いつも作る球体より大きめの球体を背後にリョクが笑う。頬に一筋の汗が流れた。と、再び突然地面が割れる。先ほどとは違い複数の植物がリョクを狙って蠢く。ふと、花が咲くのが目に入った。まずい、と両手で鼻と口を覆う。が、少々遅すぎたらしい。がくんと力が抜け着地しようとしていた幹に足がついた途端にバランスを崩した。それを見逃さなかった玲央が鞭を振るい腕に絡めた途端、バチッと電流の流れる音が響く。
「ぐっ…。」
リョクは腕に走る痛みに受身も取れず地面に叩きつけられた。
そしてポンッと頭を叩かれる。
「俺の勝ちー♪」
「はあ…まったく…参りました…。」
ふふんと玲央が笑う。リョクは悔しそうに顔を挙げ溜息をついた。
「あーあ、結構派手にやってくれたね。」
ふとリラが苦笑いを浮かべた。はっ、となりフィールドを見渡せばあちらこちらに2人の能力によって生えた植物達。リョクがしまったと思ったその矢先、
「ほんなら帰るわ!」
「ちょ、玲央さん!!」
「リョクー後片付け頼んだわー!!」
まだしびれて動かない体を半ば無理やり起こし玲央の名を呼ぶ。が、気づいたときには彼の姿は見えなくなっていた。いつの間に近くにやってきたのか、伊折がリョクの肩を叩いた。
「あの人はあーゆー人だろ…?」
「っ………。」
わなわなと肩を震わせ言葉を失う。花鈴が自身のチームメイトを連れて「それじゃ。」と去っていくのが見えた。リラが腕時計を確認し終わりの時間だねと呟く。
「リョク、綺麗にしろとは言わないけどせめて植物なんとかしてから来なさいね?」
「……ちょっとでもさすがだと思った僕が馬鹿だった。」
こうして本日の対抗戦がすべて終了した。特に目立つ怪我はなく無事に終えられた…が、リョクだけが心の傷を負うことになったのは言うまでもない。
(なあ?あんなリョク初めて見るだろ?)
(確かに…。)
(林檎ちゃん、私たちこれからどうする?)
(とりあえず…リョクさんの手伝いでもしましょうか…?)
リラがフィールド外から声をかけた。玲央が了解の合図をし向き直る。未だに不服そうなリョクをまあまあとなだめ、「ほんなら始めよかー」と開始の合図を促した。
「(玲央さんとは相性が悪いんですよね…圧倒的に不利…とはいえ毎回相性のいい相手と当たるわけもないんですけど…。)」
「考え事とは余裕やなー。」
「まさか。あなた相手に油断も隙もできたもんじゃないですよ。」
悪態をついたところでリラから合図が出された。まずリョクが先程と同じように種を落とした。トントンと叩きしゅるっとツタが伸びる。それと同時に玲央も腰につけていた鞭に手をかけた。が、それを静止するようにリョクがツタを操り手を弾く。
「いったあ。なんや乱暴やなあ。」
「どの口がそんなことを言うんですか。」
手を休ませることなく今度は水の球体を作り玲央に向かって投げつける。ひょいひょいとそれを避け今度こそしっかり握った鞭をふるった。それを飛び退き避けたリョクは冷静である。しかし、先ほどと同じような笑顔は一切見られなかった。一方、玲央は余裕の表情でじわじわと追い打ちをかけてくる。
「(今日はホワイトタイガーを連れていないだけましですが…大鷲はいつでも呼べるでしょうし油断はできませんね…。)」
ふうむと頭をフル回転させる。それを邪魔するかの如く玲央が鞭をふるった。リョクはなるべく距離を縮められないように細心の注意をはらう。あの鞭に捕まれば電流を流され終わりだ。それは彼が学院にいる間に嫌というほど学んでいる。そういえば、何度か手合わせをしたことはあるが一度も勝てたことはないな、と若干消極的な気持ちが浮かんだ。が、すぐに振り払った。
「(今日は、勝たせてもらいます…!)」
「お、やる気でてきたん?ほんなら俺ももうちょい本気だそかな。」
ふいにリョクの足元が割れ、突然姿を露わにした植物に足場をとられた。バランスを崩しかけるがなんとか持ち直しその場から飛び退く。チラリと後ろを確認すればフィールドを囲む柵が数メートルのところに見られた。このままではまずい。頭では分かっているが打開策が見当たらない。水の球体を投げたところでこの人なら簡単に避けてしまうだろう。確実に当てるためにはやはり動きを封じる必要がある。リョクはふうと一息つきトントンと地面を叩いた。が、何も起こる様子はない。
「(大方下やな。)」
と、突然リョクが動いた。さっきまで間合いをとっていたのとは真逆に一気に間合いを詰めてきた。それにすばやく反応した玲央も飛び出した。2人の影が重なる時、玲央がリョクの腕を掴む。それを振りほどこうともせずリョクはいつの間に作っておいたのか球体を近距離から当てにきた。しかし、それを読んでいた玲央は植物を操りそれを防ぐ。そして、
「次は下、やろ?」
「…正解。」
下から飛び出してきた幹をリョクの体ごと避ける。と、その時、リョクが突然玲央に掴まれている腕を引いた。うおっと声が漏れる。
「小細工が聞かないのは重々承知ですからね。」
玲央の仰け反った体を蹴り上げた。まさか自身の身を挺しての攻撃をするとは思わなかったのか、背中に衝撃を受け投げ出される玲央。しかしさすが卒業生。地面に叩きつけられることはなくひょいっと体制を立てなおした。
「いたた…ちょおほんまに今日乱暴ちゃう?」
「油断大敵です。」
いつも作る球体より大きめの球体を背後にリョクが笑う。頬に一筋の汗が流れた。と、再び突然地面が割れる。先ほどとは違い複数の植物がリョクを狙って蠢く。ふと、花が咲くのが目に入った。まずい、と両手で鼻と口を覆う。が、少々遅すぎたらしい。がくんと力が抜け着地しようとしていた幹に足がついた途端にバランスを崩した。それを見逃さなかった玲央が鞭を振るい腕に絡めた途端、バチッと電流の流れる音が響く。
「ぐっ…。」
リョクは腕に走る痛みに受身も取れず地面に叩きつけられた。
そしてポンッと頭を叩かれる。
「俺の勝ちー♪」
「はあ…まったく…参りました…。」
ふふんと玲央が笑う。リョクは悔しそうに顔を挙げ溜息をついた。
「あーあ、結構派手にやってくれたね。」
ふとリラが苦笑いを浮かべた。はっ、となりフィールドを見渡せばあちらこちらに2人の能力によって生えた植物達。リョクがしまったと思ったその矢先、
「ほんなら帰るわ!」
「ちょ、玲央さん!!」
「リョクー後片付け頼んだわー!!」
まだしびれて動かない体を半ば無理やり起こし玲央の名を呼ぶ。が、気づいたときには彼の姿は見えなくなっていた。いつの間に近くにやってきたのか、伊折がリョクの肩を叩いた。
「あの人はあーゆー人だろ…?」
「っ………。」
わなわなと肩を震わせ言葉を失う。花鈴が自身のチームメイトを連れて「それじゃ。」と去っていくのが見えた。リラが腕時計を確認し終わりの時間だねと呟く。
「リョク、綺麗にしろとは言わないけどせめて植物なんとかしてから来なさいね?」
「……ちょっとでもさすがだと思った僕が馬鹿だった。」
こうして本日の対抗戦がすべて終了した。特に目立つ怪我はなく無事に終えられた…が、リョクだけが心の傷を負うことになったのは言うまでもない。
(なあ?あんなリョク初めて見るだろ?)
(確かに…。)
(林檎ちゃん、私たちこれからどうする?)
(とりあえず…リョクさんの手伝いでもしましょうか…?)