2回戦:劉院&姫VSセナ&トキ


5分の休憩を得てから両チームがフィールドに入る。先程と同じように真ん中で向かい合い審判の開始の合図を待った。
劉院は目の前に立つ自分より大きい相手を見上げてから隣に立つ姫にチラリと視線を移した。セナの前で不安そうに肩を縮こませている彼女に本日何度目か分からないため息がこぼれた。

「(不安だ…。)」

そうこうしているうちに、審判から開始の合図が出された。その瞬間、目の前の男が持っていた剣を劉院に振り下ろす。いきなりすぎるだろ!と心の内で叫びながらそれを槍で受け止めた。

「りゅ、劉院くん…!」
「馬鹿!人のことより自分の心配しろ!狙ってんぞ!!」
「!」

一瞬の出来事に驚いた姫がたじろぐ。そんな姫を見ればセナが得意の弓で狙いを定めていた。姫は慌てて背中に白の能力者の中では小さい方であろう羽を広げふわりと宙に浮いた。

「空中だろうがなんだろうが関係ない。私の腕を舐めてもらっては困るからな。」

セナの弓矢が目標物を捉える。そしてシュッと弓矢が姫に向かって飛んで行った。

「(やっべ、白の能力使ってると俺じゃフォローできねえ…!)」

判断ミスだ。劉院は完璧な近距離型であり林檎のような飛び道具は一切持っていない。フォローのしようがないのだ。

「姫!フォローできねえから降りろ!」
「は、はい…!」

弓矢が姫に届く寸前、劉院の掛け声に慌てて羽をしまいストンと着地する。セナの射たそれは空中でぼうっと燃え上がり火の粉になって消えた。

「なるほど…。判断ミスにすぐ気づくとは。それなりに考えてはいるな。」
「……でも、こっちにも集中。」
「っ…!」

トキの剣を握る拳に力が入る。対格差では圧倒的に劉院が不利だった。姫のフォローをするために意識を集中してしまえば自分がやられる。しかしだからと言ってフォローを怠れば姫がやられてしまう。まったく、めんどうな役を押しつけられたものだ。劉院はキッとチームリーダーである伊折を睨みつけた。

「…さすがに重荷だったか?」
「まさか、あれくらいでやられるようなら劉院もまだまだね。」

フィールド外から聞こえてくるチームメイトの会話。好き勝手言いやがる、と眉間に皺を寄せた。

「はっ上等。やってやるよ!」

槍を握る手に力を込める。ぼわっと炎が燃え上がった。

「トキ、一旦下がりな。」

セナの言葉に頷きトキが後退する。劉院も姫の元へと一度下がった。

「おい、緑の能力使えるんだろーな?」
「う、うん…ちょっとだけど持ってきてる…。」
「よし…だったらそれでなんとか攻撃防いどけ。危ねえと思ったらフォローする。」
「わ、分かった!」

姫が頷くのを確認してから再びトキに向かって槍を振り上げる。トキはそれをひらりと交わしセナにチラリと視線を送った。それに頷きセナが劉院に弓を向ける。それと同時にトキが剣を振り下ろした。

「(ど、どうしよう…このままじゃ劉院君が…。自分のことだけ考えてろって言われたけど…でも…でも…!)」

劉院に向かって矢が飛んだ。両手を塞がれている劉院は避けられない。まずい、と覚悟をした、その刹那。

「!」
「…。」
「うわっ!」

劉院の目の前で複数の葉が小さな盾を作った。葉は炎の矢により燃え上がったが劉院に当たることはなく消え去った。全員が驚き姫に視線を移す。びくりと肩が揺れたが周りに浮く複数の葉を見て彼女のものだとすぐに分かった。

「ポッケに隠してたのか…?」
「…恐らく…。」
「ちっ…助けられたな…。」

舌打ちをしたものの思っていたよりやるじゃないか、と劉院はニヤリと笑う。そして姫に意識を集中したその隙をついた。

「っ!」

力をこめたそれがトキの頬をかする。そのままもう一振り。と、そこで劉院の動きが止まった。

「劉院くん…?」

姫が不安そうに彼を見る。カランと槍が手からすべり落ちた。

「っ…てめえ、いつの間に…。」
「油断…ダメ。」

劉院から飛び退いたトキの周りに黄色の花が複数咲いている。花からは花粉であろう粉が散っていた。
体が痺れて動かない。手に力が入らない。槍が握れない。悔しそうにトキを見上げれば剣を鞘にしまっていた。

「(止めを刺すまでもねーってか?…くそ…。)」

試合終了の合図が響いた。
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