1回戦:林檎VSリンネ

「げっ…リンネが1人で出るのかよ…意外だったな。」
「まあ毎回同じオーダーなわけじゃないだろうし…十分ありえるんじゃねーの?」
「林檎ちゃん大丈夫かなあ…。」

フィールドの真ん中に向かいあって立つ林檎とリンネ。正直リンネはペア戦での出場が多かったので今回もそうではないかと踏んでいた伊折は次のペア戦を思い浮かべて頭を抱えることになった。ふと対戦相手であるチームグリーンの方へと視線を向けると伊折の心情を知ってか知らずか、リョクが笑ったのが見えた。

「あんの野郎…。」
「伊折さん…始まりますよ?」
「…ああ。」

審判の合図と共に試合が始まる。まず林檎は後ろに飛び退き距離をとった。

「(リンネの能力は緑と紫…。彼女の緑の能力は恐らくここでは使い物にならないわ…注意すべきは紫の能力ね…。どちらにせよ…)」
「(林檎ちゃんの能力は黄色と青…どちらも飛び道具みたいなもの…つまり、)

「「((どちらも中距離型、条件は同じ!!))」」

スッと林檎の手が挙げられ指先が光った。その直後リンネめがけて電流が走る。リンネはすぐに飛び退きナイフを投げた。それを形成しておいた氷柱で弾き返す。そこへ間を与えず複数のナイフが林檎めがけて飛んできた。1本、2本、3本と避ける。が、4本目が林檎の頬をかすった。

「林檎ちゃん…!」

姫が心配そうに名前を呼び手を組んだ。伊折は冷や冷やしながら見守り劉院はあーあと頬杖をつく。

ナイフに塗られた毒が傷に染みる。少しだけ視界が鈍くなったのが分かった。林檎は一度手を下ろしナイフの襲撃に備えるために複数の氷柱を形成しておく。
その数秒後、再び投げられたナイフを1本1本丁寧に弾き返した。しかし、最後の1本を弾き返したところで林檎の体が傾いた。地面に膝をつき、動けない。まずい、と伊折が林檎の名を叫ぶ。

「(勝てる…!)」

リンネが手にしたナイフを投げる。姫はぎゅっと目をつぶり劉院は溜息をついた。蜜柑がこの程度か、と呆れたように眼鏡を押し上げる。
誰もが勝負は決まったと思ったその時、

「嫌だわ。なんて顔してるのよ。この私を誰だと思っているの?負けるなんてありえないわ!!」
「っ…!」

林檎は地面につけた膝を半ば無理やり動かし間一髪でナイフを避けていた。頬を滴る血を拭い反対の手を挙げる。再び来るであろう電流に備えリンネは身構えた。しかし、林檎の指先から電流は一向に流れなかった。

「えっ。」

しまった、とリンネが飛び退くが遅すぎた。いつの間に間を詰めたのか、林檎はリンネの目の前にいた。指先に集中してしまった彼女は突然のスピードに対応しきれなかったのだ。
林檎がすぐに氷柱を彼女に向かって投げかけた。負けじとナイフを握り弾き返すが1つ2つと氷柱が服を貫く。彼女が尻餅をついたと同時に顔の目の前に林檎の指が差し出された。スカートに氷柱が突き刺さり身動きはとれなかった。

その瞬間、審判の試合終了!という言葉と共に1回戦が終了した。



「ひえええ…ごめんなさい…。」
「どんまいどんまい。リンネも惜しかったぞ!」
「…頑張った。」

試合を終えリョク達の元へ戻ってきたリンネは少し申し訳なさそうに謝ったが2人がそれを元気づける。リョクも「今日はいつもより調子がよかったですね。」と褒めていた。

「大丈夫だって。これから負けなければいいんだ。」
「そうですね。2人とも、任せましたよ?」
「…。」

リョクの言葉にトキが頷きセナがもちろん!と意気込んだ。と、そこでリンネは思い出したように慌ててチームオベイの方へと戻る。伊折に支えられている林檎の元まで走り「大丈夫ですか?」と声をかけた。

「これ、解毒剤なので飲んでおいてくだい。」
「あら、ありがとう。それにしても…リンネの毒は効きが早いのね…。」

もう少し時間があると思っていたわ…と林檎が苦笑いを浮かべた。伊折が油断しただろーと言えばあんた達じゃあるまいし!と反抗的に言い返す。リンネは仲がいいんだなーと思いつつ、それじゃあと言ってリョク達の元へと再び帰って行った。

「さーて、次はペア戦か。劉院、姫のこと頼んだぞ。」
「はいはい…分かってますよ…。」
「えっと…頑張る?ね…。」
「そーゆーのいいから!なんでお前いっつもやる前から不安そうなんだよ!」
「劉院!プレッシャー与えないの!」
「…あーもうすみませんね!」

前言撤回。仲がいいのかどうかは置いておいて、次のペア戦に備えた2人が軽く体をほぐす。伊折が2人の背中を叩き行ってこい!と声をかけた。

「…あんたの出番ねーから。」
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