オベイVSグリーン

広い学園の校庭に置いてあるベンチに蜜柑は座っていた。暇そうにボーッと空を見上げていた彼はふと校舎の方へと視線を送る。ふぅと息をつきベンチに座りなおすとキッと同じ方向を睨みつけた。

「おっせーんだよ…。」
「ええ…今日は頑張ったんだけどなあ…。」
「今日は?どこがだ!!30分!!30分遅刻!!」
「いつもは1時間だよ…。」
「1時間だろうが30分だろうが遅刻じゃ意味ねーの!!分かるか!?日本語理解できるか!?」
「そこまで言わなくてもよくね!?」

校舎から少し慌てて走ってきた青年、もといシェルツに蜜柑は怒鳴り散らすように罵声をあびせた。少々苛立っているらしくガシガシとシェルツの足を蹴りつける。その度に痛い痛いと声を上げるシェルツに遠慮など皆無だ。昨日も一昨日も集合時間に遅れてくる彼にそろそろ我慢の限界が見えてきたからだ。いっそ彼にのみ早めの集合をかけるべきではないのかとさえ考えていたくらいだ。

「あんた達何してんだい…。」
「シェールツ!!」
「うわっ。双葉…急に飛びついたら危ないだろ…。」

そこへ同じチームである花鈴と双葉がやってきた。シェルツが来ず暇だった2人は蜜柑をその場に残し木陰に行っていたのだがどうやらシェルツに気づき戻ってきたらしい。

「餓鬼か。」
「蜜柑ったらー寂しい?寂しい?蜜柑には飛びついてあげなーい。」
「で、花鈴さん今日はどうするんですか?」
「無視したー!!」

相変わらず騒がしいチームメイトだと花鈴は溜息をこぼした。とにかく気を取り直し「ついておいで」と言い歩き出す。3人は首をかしげつつもその後を追った。

「どこに行くんですかー?」
「対抗戦。」
「僕たちは今日対抗戦の実践はいれていませんが…?」
「ちょいと私の知り合い同士が当たるらしいんだ。面白そうだから見に行こうかと思ってね。3人にとっても参考にくらいはなるだろう。」
「げっそれって。」
「そうか、あいつはあんたの姉のチームメイトだったね。」

ゆっくりと歩きながらの会話で蜜柑は顔を顰めた。自身の姉である林檎が今日は対抗戦があるのだと言っていたのを思い出したからだ。わざわざ姉の対抗戦を見に行くだなんて周りから変な誤解をされてはたまったものではない。中にはからかいながら応援に来たのかと聞いてくる輩がいる。まったくいい迷惑だ、とかけていた眼鏡をクイッと押し上げた。

「まあそうかっかしなさんな。あんた姉の実力を見たことがないんだろう?いい機会だ。見ておきな。」
「…花鈴さんがそう言うなら。」

こうして4人は対抗戦が行われるであろう目的地へと足を進めた。ここだね、と花鈴がこぼした先には既にたくさんの人が集まっていた。蜜柑は姉の姿を探してみたが見当たらずはて、と首をかしげた。姉のチームメイトである黒髪の青年と茶髪の青年はいるのだが残りの2人がいない。どこかへ行っているのだろうかと思ったが自分には関係ないのでほっておくことにしよう。花鈴はというとキョロキョロとあたりを見渡しお目当ての人物のもとへと足を進めていた。

「リョク、調子はどうだい?」

花鈴に声をかけられたのは彼女の元チームメイトである青年だった。彼は4人の姿を見て少々驚いたようだがすぐにいつものように優しそうな笑顔を浮かべてこちらに駆け寄ってきた。

「花鈴さん。見に来たんですか?」
「まあね。久々にあんた達の実力を見ておこうかと思って。」
「それでは尚更負けられませんね。」
「まあ頑張りな。」

肩をポンと叩きそれじゃあとその場を離れる花鈴の後ろを再び3人はついていく。次に声をかけたのは先ほど蜜柑が見つけた姉のチームメイトだった。

「伊折。」
「げっ。お前見に来たのかよ…。」
「随分嫌そうな顔をするね。文句でも?」
「滅相もございません。」

ニコリと笑う花鈴に両手を上げて降参のポーズ。後ろで劉院が「だっさ…。」と呟いたがシェルツがこらとほっぺをつねった。双葉はそんな彼を見てケラケラと笑う。双葉の頭にチョップが決まるのは数秒後の話。

「あら、蜜柑。なんでここに?」
「…別に。」

蜜柑はそこで一番顔を合わせたくない人物が戻ってきてしまったことに気づくのが遅れたことを後悔していた。いつものようにそっぽを向けば林檎が「あんたはほんとに素直じゃないんだから…っ。」と溜息をついた。そんな彼女に劉院が再び「そりゃこんな姉持ったらな…。」と呟き腹部にクリーンヒットをくらっている。

「お前…理解してくれるのは嬉しいが世の中建前も必要だぞ…。」
「覚えとく…。」

劉院に同情の眼差しを送り肩を叩く。と、そこに姫がやってきて準備をするようにとのことだと伝えた。伊折は背伸びをして軽く体をほぐす。

「そんじゃいっちょやるか。見とけよーリョクなんか軽く倒してやるからな!」
「威勢がいいのはいいが油断したら負けだよ。」
「わーかってるって。」

そこで4人は邪魔になると悪いのでその場を離れた。対抗戦の見やすい位置に移動しことの行方を見守る。

「花鈴さんはどちらの応援を?」
「応援なんてしないさ。あくまで見物にきただけだしね。」
「じゃあじゃあどっちが勝つと思います?」
「それは…俺も興味があるな。実際あの2人、どちらが強いんですか?」
「どっちもどっちだね。でも、まあ多分…。」

3人は彼女の視線を追いふうんと頷く。それと同時にチームオベイVSチームグリーンの対抗戦の始まりの合図が告げられた。
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