赤ブン | ナノ
 
寂しくて


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 3-B

昼休み後、午後の授業が中盤に入ったところで、ブン太はふと思った。

─赤也とちゅーしてえなぁ…


他の部より練習量が多いテニス部は、自分の時間が少ない。 
それに、全国大会も近い彼らにとって毎日の日常はテニスで埋め尽くされている。

ハードな練習や練習試合のため、
授業中に寝ているということも珍しくない程だ。
それは、ブン太も例外ではない。

─最後にヤったの2週間前だよな…、

そう思いながら、ブン太の意識は途絶えた。


「ブンちゃん、起きんしゃい。
 授業終わったぜよ」

同じクラスメイトである仁王が声を掛けたときに、ブン太は自分が授業中に寝ていたことを思い出す。

「…俺、寝てたのか」
「随分と幸せな顔で寝とったが
 何の夢を見てたんじゃ?」
「…赤也が俺にちゅーしてくれた、夢」
仁王は一瞬呆けた顔をしたが、直ぐにプッと吹き出し笑った。

「何じゃ、ソレ。
 ブンちゃん欲求不満なんか?
赤也も罪な男じゃのう、と呟いている仁王の言葉が何となく耳に残った。そして、ふと頭に出てきた言葉を無意識にそのまま口にしてしまった。
「あかや…、好き」
仁王は驚いた顔をしブン太の顔を見た。

「…ブンちゃん、
 熱でもあるんじゃなか?顔は赤いし、
 目がはっきりしてないぜよ」
「あぁ、うん…。
 つか、俺今何つったっけ?」  
「…眠い、と言っとったナリ」
「そっか。じゃ、わりーけど保健室
 行ってくるわ。先生にシクヨロ」
ブン太は立ち上がりドアへ向かう。
その力ない姿に仁王は心配に思い、自分も保健室に一緒に行くと言った。

だが、ブン太はその声が聞こえなかったらしく教室を出てしまった。
「…これは重症じゃな。
 赤也は何をしとるんじゃ」
仁王の呟きは教室のざわめきに消えていった。


──

眠い英語の授業で多くの生徒が欠伸をしている中、寝息を立てながら寝ている一人の生徒がいた。
テニス部の切原赤也だ。 
授業中に毎回寝ている彼に、ついに先生が声をかけた。
「こら、切原。起きなさい」

赤也は、目を覚ましたかと思えばクラスの笑いを起こす一言を放った。

「まだ、昼じゃん…、後5分…」
「何を言っているんだ切原!
 今は授業中だぞ!」
「…へ?あ、先生じゃないっすか。
 …あぁ、授業中か」

クラスにどっと笑いがこみ上がった。
赤也は頭を掻き、笑いながらすんません、と謝る。
「切原、お前は最近たるんどるぞ。
 しっかり授業を受けなさい」
どこかの副部長の顔を思い浮かべながら、はーいと返事をした。
そして、残りの授業をうつろうつろに受けた。


授業が終わり、ぼーっと窓の方を見ていた赤也は先ほど見ていた夢を思い出していた。

―そういやここのところ
 丸井先輩とちゅーしてねえなあ
 
今日あたり家に誘ってみようかなと思い、トイレへ行こうと席を立ったとき、ブン太の姿が見えた。

何故此処に居るのだろうと思う前に赤也は彼の元へと走っていた。

「丸井先輩!どうしたんすか?
 こっちに来るなんて珍し…」
言い終える前にブン太は赤也に自分の体を預けた。明らかにブン太の様子がおかしいと思った赤也は、クラスメイトに次の授業は休むと伝え、ブン太を連れて保健室へ向かった。

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