赤ブン | ナノ
 
寂しくて


               (2/3)

保健室には運良く誰もいなく、先生も出張で居なかった。


赤也は先程から、ずっと顔を伏せているブン太をベッドに座らせ、自分もその隣に座った。ブン太の顔を心配そうに見つめ優しく問う。

「先輩、もしかして寂し…」
全てを言い終える前に赤也に抱きついた。そして、普段の彼からは絶対口にしないことを赤也に言う。
「赤也…、寂しかった」
素直に自分の思いを言わないブン太がそうなったことに対して、赤也は少なからず驚いたがソレ以上に普段見せない姿に可愛いと思った。

「っ、先輩可愛すぎっしょ」
赤也は唇に噛み付くようにキスをした。ブン太の口からは飲みきれなかった唾液が伝う。
「ん、っ…は、赤…也…」
長い間そうしていた二人は互いに熱が高まってきた。赤也は、うっすらと顔を赤く染めているブン太を押し倒す。ブン太は赤也を潤んだ瞳で見上げる。

「赤也…、抱いて…。
 お前をもっと感じたい」
いつも以上にこの先輩が愛おしく見えてしまい、我慢ができず相手のネクタイを早急に緩めた。

「先輩…」
ワイシャツを脱がし首筋に噛み付いた。
自分のモノだという風に、強く吸い付き痕を残す。

「赤也っ、痛いし、
 ソコ見えるじゃねーか…」
「だって、俺のモンだって
 見せつけてやりたいんすもん。
 …それに、先輩も満更じゃないっしょ?」
「ば、ばっか…!」
顔を真っ赤に染め上げ、視線を逸らす。赤也はその隙を逃さず、鎖骨に強く痕を残す。「っ、あ…」
「あ、血ィ出てきちまった」
「いてぇンだよぃ!
 加減しろ!ばかっ!」
「やだ」

付けた痕から出てきた血を舌で舐める。
ブン太はひぃっと声を上げ、赤也を睨む。
「なっにすんだこのワカメ!
 お前は吸血鬼かっつーの!」
ブン太は先ほど以上に顔を真っ赤にしてそう赤也に言う。睨まれた赤也は微笑する。

「可愛い声出しますねえ、先輩。
 つか、元気になりました?」
「え?あ…」
「素直な先輩も可愛いっすけど
 先輩はそうやって元気に
 笑ってたほうが可愛いっすよ」
愛おしそうにブン太を見る。ブン太は顔を横に向けた。その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。

「…一言余計なんだよぃ。
 分かってたんならもっと
 俺と一緒にいろぃ」
「すんません。
 つか、もう我慢の限界っす。
 続き、シません?」
最後の一言は耳元に唇を寄せて言う。

「い、一々耳元で喋んなっ」
照れた顔も可愛いっす、とくすくす笑う赤也の腹を殴る。しかし、その力は弱く、ふるふると震えていた。

ブン太は瞳から涙を流し、嗚咽しながらも自分の思いを伝える。
「赤也のばかやろ…っ。ばか…っ、ばかっ…」
「先輩…、そんな泣かないで」
年上の恋人の頭を撫でながら壊れ物を扱うかのように優しく抱き締める。

「っ、早く抱け…バカ也」
「先輩も一言余計っすよ、
 …可愛いから良いけど」

赤也は乱れた服を全て脱がし、自分も裸になる。そして、相手の少し勃った陰茎を手で掴みゆっくり扱く。
「っあ…、赤、也…待って、」
「すんません、待てないっす。
 …先輩、声我慢しないで」
「っ…ひ、人、来たらどうすんだよぃ…」
「見せないように
 抱くんで安心してください」
「そういうことじゃ…あっ…」
「先輩、もうこんなにしてるじゃないっすか。我慢できるんすか?」
「…ばか」

赤也は完全に勃ち上がった陰茎を自分の口に含み、ソレを舐め回す。ブン太は抑えきれずに口から声を漏らす。
「っんあ、ぁ…ん…や…離っ、せ…」
「先輩のココ、すんげーやらしくなってるっすよ」
「言…うなぁっ…んああ!」
赤也が裏筋を舐めあげ、先端を弄ると、その刺激に耐えきれずにブン太は呆気なく精を放つ。そして、呼吸が整わない体で顔にかかった精液を舌で舐める赤也を力ない瞳で見る。
「はぁ…はぁ、…ンなの、舐めんじゃねぇよ…」
「先輩のだから舐めるンすよ」
「っ、も、早く…」
ブン太はその言葉に照れたらしく、先を急かす。それを悟った赤也は精液を指に絡ませ、後孔に人差し指をいれる。その途端に指が締め付けられ、ブン太は顔を歪ませる。
「先輩、ちょっと力抜いてくださいっす」
「あ…む、り」
「こっっち向いて、先輩」
言われた方に顔を向けると、赤也に長いキスをされる。
「ん…っ、ふ…」
キスによって体の力が段々抜け、体内の指がどんどん奥に入っていく。
二本目、三本目と指が入り、後孔が解れたところで赤也の顔が離れていく。

「は…っ、は…」
「もう、慣れました?俺、そろそろ先輩ン中に入りたいンすけど」
「っは、あ…キス、長すぎ…っ。俺を殺す気かっ…」
「先輩の唇が気持ちよくて、つい。でも、気持ち良かったっしょ?」
笑いながらそう言う赤也にブン太は睨む。

「つい、じゃねぇだろぃ!死にそうだったんだぞ!」
「今マジで余裕無いンっすよ、説教は後で聞くんで。…いれますよ」
「え、ま…っ、」
ブン太の言葉を最後まで聞かずに、赤也は後孔に先端を捩じ込んでいく。ブン太は挿入による痛みを我慢しているようで、シーツを掴み顔を強張らせている。
赤也は残りの理性を働かせ、なるべく傷付けないようにゆっくり腰を進めていく。

「あ、あ…かや…入った、か」
「っ、全部入りましたよ」
「ん…、動いて…」
「背中に爪立てて良いっすからね」
ブン太は赤也に抱きつき、迫り来る快感に身を備える。
赤也は突起を弄りながら腰を打ち付け、ブン太にキスをする。

「っあ、んあ…かやっ…やぁ、んああ!」
「先輩…っ」
初めはゆっくりと突いていた赤也だったが、ブン太の喘ぎ声に我慢できず、激しく奥を突く。快感が強くなってくると後孔が締め付けられ、爪が背中に食い込まれる。

あぁ、幸せだな、と赤也は思う。

以前、部活の後で着替えているとき、この爪痕を先輩である仁王に見られてしまったことがあった。仁王は勿論、テニス部のレギュラーは自分たちの関係を知っていたため、見られるのは別に良いと思っていた。
だが、ブン太は違ったらしく、仁王がその爪痕について問いただしたら顔を真っ赤にして先に帰ってしまったことがあった。


それからこの爪痕を見る度にその時のことが思い出され、にやけてしまう自分が居た。
ブン太にわざと爪痕を見せてからかったこともあるし、ブン太の前で仁王と爪痕について話したこともあった。

その度にブン太は怒っていたが、彼も幸福を感じていたに違いないと思っている。
情事の度に爪痕を付ける彼が本気で怒っているわけない、と。


「あ…っん、あ!も…イく…っ」
「は…っ、ゴム付けんの忘れてた、中出ししてもいっすか…っ」
「ばかぁ…っ、んっ…」
「はは…、本当に今日余裕無ぇわ、」
赤也は激しく腰を打ち付け、ブン太を限界にまで追い詰める。

「あぁん…っや…あ、んああ!」
「っ、は…」
ギリギリまで引き抜き、奥に勢いよく突くと、ブン太は甲高い声を出しながら果てる。その締め付けに赤也も耐えきれず体内に精を放つ。
瞬間、授業の終わりのチャイムが鳴り響いた。その数秒後、情事後の独特な匂いに包まれた保健室のドアが勢いよく開く。

「っ!?」
二人は余韻に浸る間もなくびくっと肩を震わせ、瞬間的に赤也が自分たちの上に布団を被せる。勿論、繋がったままで。

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