安らぎとかそんなの学園にはない。当然、あの一件のお陰なんだけどそれを抜いたところで楽しいことなんて有りやしない。授業は簡単過ぎてつまらない。同学年との会話もくだらない。唯一話すサスケもそこまで連んでるって訳でもってなくただ席が前後だというだけでたまに会話するくらいだ。それでも少し大人びた印象のサスケは他のクラスメイトに比べると格段に話しやすいタイプだと思う。

「お前、毎回休み時間の度に居なくなるよなぁ。」

「…仕事だからね。」

「ふーん。大変だな。」

授業開始のチャイムが鳴っても来ない教師。勿論呼びに行くだなんてバカはいないワケでクラスは話し声で騒がしい。特に何かをするでもなくボーっとしていると振り向いてきたサスケに声をかけられた。

「鬼眼が関係してんだろ?」

「…真田か。」

「まぁね。そういうのは幸村の耳に入るの早いからな。」

何かと噂やらの話が奴の下に行くのは一部生徒では知れ渡っている。いつかバレるとは思っていたけどもしかするとあの勝負自体を盗み見ていたのかもしれない。気にくわないがその他大勢に他言しないだけマシと捉えておこう。

「自業自得ってやつだから不愉快だけど仕方ない。」

「俺がどうこう言える訳じゃないけど、頑張れよ。」

励まされてるのは感じられるけどねじ曲がった僕の性格上素直に礼が言えないから苦笑いを浮かべた。丁度その時慌てた教師が駆け込んできて会話はそこで終わった。



毎回屋上チェックの度に居る奴は違う。ほたる(これも強制的に呼ばされてる)だけの時や梵だけの時。鬼眼の場合誰かが必ずそばに居るし(ほとんどが灯だけど)、勿論誰も屋上にいない時もある。アキラはたまに誰かと居るのを見るだけで1人で屋上に居ることはない。そう思うとアキラと灯は真面目な方なのかもしれない。稀にゆや(これも勢いに負けて呼ばされてる)が鬼眼を探しに来ることもある。
たまに屋上の扉に手をかける時、くじ引きをするような感覚を覚える。未だに"当たり"が自分でも分からなかったりするけどきっとそんなのはないんだろう。だって、このくじを引くこと自体が"はずれ"なんだから。

「…はずれの中でも今日は大はずれだよ。」

ガチャリと開けた瞬間視界に飛び込んできたのは夏休み明けから僕を煩わせてきた奴らだった。ついこの間突き放してやった顔もある。つまり、僕に玉砕された奴らだ。知らない顔もちらほらまじっている。顔を覚えてやってるだけ僕を誉めて欲しいものだ。

「えらく物騒だね。そんなものを持って集会でもしてるの?生憎ここは立ち入り禁止だから場所を変えてくれない?」


薄ら笑いを浮かべながら強気に言ってみても冷や汗は否定できない。完治できてない身体中の打撲や傷ではこの人数相手するのは厳しい。ざっと30人ってとこか。手にはそれぞれ思い思いの武器ときた。あーあ、悔しいけどまだまだ包帯は外せそうにないみたいだ。

「僕も甘いものだね。」

迂闊に扉を開けるだなんて。この間の生徒が言っていたじゃないか。痛い目をみるって。この性格を嫌うのは僕だけじゃないって僕が一番分かってたのに。

「…アイツらのこと考え過ぎだったみたい。」

自嘲気味に笑う。
僕の登場で散々騒いで煩く罵って来ていたそいつ等は無視されていることに腹を立ててきた。
本当に煩くて、鬱陶しくて、腹立たしくて、邪魔なやつら。

「女の子1人に対してその武装は無いんじゃない?ま、いいけど。無傷は無理そうだけど負ける気はしないからね!」

しっかり見据えてやるとビクリと数人が怯んだ。上級生まで混じって肩を震わせてんだから笑えるよ。1人が動けばまるで波のように襲いかかってくる。
次の授業はサボリかな。別に構わないけど。僕は正義や秩序なんかどうでもいい。元はどっちかというと限りなくアイツらに近いある意味の問題児なんだから。



100915.





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