手足の包帯、顔の絆創膏。それだけでも目立つ姿なのに夏休み前までのズボン姿がスカート姿に変わったんだ一層注目されるに決まってる。驚きの目線がいやらしいそれに変わったのはすぐだ。目も合わせてこなかったやつが話し掛けてくる。夏休み明け、初めての登校日だった。

「何?女の子だったわけ?」

「やっぱりなぁ俺は感づいてた!」

「スカートの方が似合うって!」

煩い煩い煩い煩い!!気持ち悪い。なんて気持ち悪いんだ。下素共め、女と分かればなんでもいいのか。僕に馴れ馴れしくしたり、それは女と分かって格下にみたんだろう?女で何が悪い。男の何が偉い。クズ共が寄ってたかってなんだ。一人だって僕に勝てる筈がないくせに!力量を知れ!見た目で僕の何が分かる!



「ああ、ちゃんと約束守ってくれてるんですね。あなたにしてはエラいじゃないですか。」

目の前のいやらしい笑顔を浮かべた男の顔を見れないくらいにしてやろうと手に力を入れた瞬間聞こえた声。他学年の教室に遠慮なく入ってきた僕の不幸の元凶はいつもと変わらず微笑んだまま近いてきた。

「……朝から会いたくもないのに。ここは一年の教室だ。出て行きなよ。」

「ヒドい格好ですね。」

話を無視してクスリと笑われギリリと歯を鳴らした。

「履かせたのはお前だろ!」

「おや、大きな声で言っていいのですか?」

私に負けたと
耳元で小さく言われた言葉にイライラが最高潮に達した。目一杯睨みつけるとカバンを持って登校したての教室を飛び出した。
もういやだ。屈辱的で羞恥心を掻き立てられるこの環境が嫌で嫌で仕方ない。誰か誰か誰か!

バタンと入室したのは生徒会室。更に進んで奥の部屋に入ると幹部部屋がある。そのドアを開けると他の幹部全員がいた。

「うわっ!マジでスカートかよ!?」

「…煩いよ。」

「似合ってますよ?」

「……煩いってば。」

「朝礼が始まる、行くぞ。」

「………。」

ひしぎと遊庵は先に部屋を出た。吹雪さんはまだ座ってる。行くって言ったのは吹雪さんなのにおかしいよ。

「時人お前もだ。」

「僕は、嫌。」

「許さん。行くぞ。」

俯いて拒否してみても吹雪さんは甘やかしてはくれない。吹雪さんは厳しいってわかってるのに。僕は何がしたいんだろう。立ち上がった吹雪さんは僕に近づいてきて頭に手を置くと出て行った。まるで分かってるって言ってくれたみたいに。
朝礼はグラウンドで行い全校生徒が参加を余儀なくされる。その集合を合図するチャイムが鳴った。それに合わせて少しだけ、本当に少しだけ声を殺して泣いた。



落ち着いてすぐに朝礼に向かった。遅刻をすることなく幹部席に着席する。まだ隣の遊庵が騒ぐから足を思いっきり踏んづけてやった。ざまあみろ。

叔父さんが教壇に上がって挨拶をし続いて吹雪さんの話。そのあと1日の掃除やHRの説明をし解散となった。解散後、四聖天に話しかけられたがもう吹っ切れた僕はそつなくあしらった。

「随分と気分が良くなったみたいですね?」

「吹雪さんのおかげでな。」

他の四聖天が去ってから近づいてきたアキラがまた話しかけてきた。さっきほどイライラしないのはやっぱり吹雪さんのおかげだろう。

「…そうですか。ああ、そうそう先ほどのことですが。」

「教室でのこと?」

「ええ、"ヒドい格好"というのは包帯だらけのことですよ。」

「は?」

「スカート、可愛らしくてお似合いですよ?」

「なっ!ど、どっちにしろお前のせいじゃないかっ!!」

顔に熱が集まるのが分かった。手の甲で口を隠して怒鳴った。分からないけど他に言われるのよりも恥ずかしくて居たたまれない。

「だ、大体見えてないだろ!!」

「見えてますよ。」

見くびらないで下さいだと!?どう見えてるってのさ!とまた怒鳴るとあなたには分かりませんよとバカにされた。




100908.





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