「すっげえ眠そう。」

「……うるさいな。」

教室に入ってからサスケと何回この会話をしたのか、くだらないし数えてなんかないけどとにかくうんざりする程はした。
眠い。連日の寝不足が祟ってるんだろうか。

それでも毎回の休み時間には屋上に顔を出す。今のところ誰にも会ってはいない。
授業終了のチャイムが鳴って僕は教室を出た。屋上へと足を進めながら欠伸をかみ殺す。午前の授業は後一つ。その後は昼休みだ。1日を考えるとかなり長いけどこの眠気に負けるわけにはいかない。授業中に寝るという行為はどうも好かないからだ。髪が変に癖付いたり頬や額に跡が付いたりで間抜けに見える。寝ている姿を他人に晒すというのも気が進まない。ましてや雑音だらけの空間で寝るなんて僕には出来ない。

授業中は気を紛らわせるために今朝の出来事について考えてた。僕が謝った理由についてだ。自分のことが分からないなんてバカみたいで嫌だからね。

吹雪さんに謝ることには抵抗はないし別に気にならないんだけどやっぱりアキラに謝ったって事が引っかかる。
いくらアキラが怒っていたって今までの僕なら謝ったりしなかったはずだ。というよりアキラの怒り具合が結構、怖かった…かも。無言の圧力ってやつだ。背中から何か出ていたようにも思う。僕が怖がるなんて認めたくないけどなんて言うか、謝らなくちゃいけない雰囲気だったように思う。だから結論はアキラに流された、にしておく。それがいい。ここ最近は流されることが多いからきっとそれだ。



薄暗い階段を上がりきるとまた欠伸が出た。周りに人はいない、かみ殺さなくていいだろう。

「鬼眼だけ…か。」

「………。」

扉を開けると最早定位置となってしまった場所に座る鬼眼がいた。鬼眼は比較的煙草を吸う姿が少ない。ゆやが口うるさいのもあるかもしれないけど最近では昼休みに喫煙はしていないようだ。

「ねぇ、最近家に帰った?」

「…それがどうした?」

肯定も否定もしないで質問には質問で返すところは小さいころから変わらない。

「……別に、聞いてみただけ。」

きっと鬼眼は帰ってなんかないし聞いたところで恥をかくだけだ。ぬいぐるみが何処にあるかなんてそれこそ鬼眼の知ったことじゃない。

ぽかぽかとした日差しに心地よい風。眠気を誘うには十分で僕は堪らずに欠伸を漏らした。

「珍しいな。寝てねぇのか。」

「寝てはいるけど寝つきが悪くてさ。」

この会話は今朝もした気がする。そんなに心配することだろうか。
ああでもやっぱり眠たい。襲り来る睡魔には勝てそうにない。この気候は不利だ。早く退散したいけど鬼眼を動かすのは疲れる。毎回予鈴ギリギリでやっと追い出せるくらいなんだから。

「もういいや、」

滲み出た涙を拭きながら歩み寄ると鬼眼の隣に腰掛けた。鬼眼の隣なら寝れるだろう。そんな気がする。

「3分経ったら起こしてよ。それまで仮眠取るから。もう限界、ホント眠い。」

「……(インスタント)」

返事も聞かずに目を閉じた。すぐに力が抜けていくのがわかった。



110225.





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