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「ジャーファルさん、ジャーファルさん!」


週末、珍しく仕事をせず休みをとったジャーファルの家にアリババが遊びに来た。ついさっき到着したばかりだったため荷物を置き、これからジャーファルとくつろぐ準備をしていた。だが、その本人が突然バタバタと足音を立て廊下から名前を呼ぶものだから、何事かと思いキッチンでコーヒーを淹れていたジャーファルは声のするほうに顔を向けた。その壁から姿を現したアリババの手には一つ、赤い箱が握られていて。


「おや、ポッキーですか。どうしたんです?」

「へへ、知ってますか?11月11日はポッキーの日なんですよ。」


得意気に言う様子を微笑ましく思いながら、冷蔵庫にマグネットで無造作に貼られたゴミ出し用のカレンダーを見て、なるほどと頷く。しかし、趣味が仕事なだけあってこうした類いには滅法知識がなく。ポッキーを使ったゲームをするのだったか。


(たしか、前にシャルルカンとピスティがそんな話をしていたような…)


調子の良い部下二人の顔を思い浮かべ、以前の飲み会でのおぼろげな記憶を引っ張り出す。


「俺、一度やってみたかったんですよ。ポッキーの日にポッキーゲーム!」

「ふふ、そうですか。」


話を耳にした時は単なるゲームだと興味など湧かなかった。しかしアリババが言うと途端に可愛らしく思え、溺愛ぶりを自覚しつつたまには良いかなとすら考えて。


「でも、まどろっこしいですね…」

「え?」


少しトーンの落ちたジャーファルの声に首を傾げ顔を覗き込もうとした。瞬間、腕をぐっと引かれ驚く暇も与えられず唇に温かいものが押し付けられて。


「んっ……ジャーファ…ふ、ぁっ」


僅かに唇が離れ震える声を振り絞って相手を呼ぼうとしたが、すぐにまた口付けられ。ぬる、と別の熱が入ってきた。
軽いキスですら漸く慣れてきたばかりのアリババは、激しさに反して優しく頬に添えられた手を感じながらその白いシャツの袖をぎゅっと握り。上手くできている自信はないが、相手に応えようと必死に舌を絡ませる。すると興奮したらしいジャーファルも舌で歯列を丁寧になぞったり顔の角度を変えるようにして口内を犯し激しさを増して。苦しさと羞恥に息をあらげたアリババは背後のシンクに寄りかかり、がくがくと震える足を支えた。その様子に気付いたジャーファルはゆっくりと唇を離し。いやらしく光る繋がれた糸がぷつ、と途切れ、舌で舐めとる。その光景に耳まで上気させ涙目になったアリババは呼吸が整わないまま俯いて。


「はっ、はぁ…」

「…大丈夫ですか?」

「…はい…」


小さく頷く自分より小柄な頭を見て、自然と笑みがこぼれる。


「ごめんね。ポッキーゲームも良いのですが、今すぐに君の唇が欲しかったから。」

「なっ…、ジャーファルさん…!」


耳元で囁かれたアリババは慌てて目をきょろきょろと泳がし顔は蒸気が出るのではというほどに真っ赤で、それを見て思わずくすくすと笑ってしまい。


「わっ、笑わないでくださいよ…!」


拗ねたように胸に顔を埋めてくる。くぐもった唸り声を上げる愛しい身体を、ジャーファルはいたずらそうに笑んで思いきり抱きしめた。



EAT ME



(…俺がやろうとしてたポッキーゲームは、違うやつです。)

(えっ。)

(ポッキーを互いに交差させて、引っ張って折れたほうが負けっていう…)

(…それは知りませんでしたね…)




20121216.


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