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昼下がりのシンドリア、常夏の国には貴重な肌寒さも過ぎてじわじわと汗の滲む時期に差し掛かろうかというこの時、ユナンは訪れて来た。突然の訪問にはシンドバッドも慣れたもので、いつぞやのように中庭に家を建てられぬよう自室へ招き入れ半ば監視下に置く。抵抗はするもののユナンもそれに従い終いにはにこにこと部屋を見渡し物色しては部屋の主に咎められていた。
そんなある日、シンドリア滞在から幾日か。占領していたベッドからのそのそ這い出てきたユナンは朝食を摂る口も覚束ぬまま徐にこの国の見物を希望した。シンドバッドも息抜きに出掛けるかと思い案内を了承したが、同時に悪巧みを思いつく。


「日の出ているうちは暑いから、夜の散歩にでも出掛けるか。」

「夜も賑わっているものね…昼のシンドリアも今度案内してね。」

「ああ。」


にこやかに返すも内心は既に思いついた計画を完遂すべく巡らせていた。




「君の言ったとおり寝巻きでちょうど良い感じだね。」


散々夕食の席で果実酒を飲まされたユナンは、王宮を出る前にシンドバッドから寝巻きで充分だと助言されそれに倣っていた。客人や食客用のその寝巻きはアリババたちにも提供されているもので、その上にシンドバッドの衣装室から漁り取ってきた薄手のショールを羽織っている。屋台の犇く通りから外れた暗がりだが穏やかな道には同じような格好の民が夜の空気を楽しんでいるのが見られた。時折空に輝く星を眺めては露出した肌を優しく撫ぜる生暖かな風に目を細める。そんな足取りも軽いユナンを隣から口元を微笑ませながらシンドバッドは見ていた。


「……」

「どうした?」

「うん…あのね…」


隣から足音が止んだのを不思議に思いシンドバッドが振り返ると、歩みを止めて着けている寝巻きの裾を握り締めるユナンがそこにいた。声をかけてみても言い淀むばかりで。もう少し距離を詰めてシンドバッドが覗き込むように屈むと、髪と同色の長い睫毛がゆっくりと伏せられ、皺の寄る裾を握っている手が震えた。


「その、ね…トイレに行きたいんだけど…」

「あー、酒飲みすぎたな…。だが帰らないとこの辺にはないし。」

「っ……保たない、かも…」


羞恥の滲む瞳が揺れるのを見たシンドバッドはほくそ笑む。こうなるように夕食の席で大量の酒を用意したのだ。あとは暗がりに連れ込むだけ、頼りない程に震えている細く生白い腕を引く。


「ここなら大丈夫だろう。」

「こんな、木の陰でなんていやだよ…!」

「路地からも外れた場所だ。人なんてまず来ないさ。」

「そうじゃなくて…っ」


つらくなってきたらしく、余裕なく吐き出された声も震えている。それを火種にするようにシンドバッドは背後にまわってその両手を剥ぎ取り、訝しげな視線を投げるユナンも気にせず腰に回した手で寝巻きを捲った。露わになった色素の薄い肌色から顔を上げると、呆気に取られている相手と目が合う。


「ほら、裾上げとけ。手ェ離すなよ?」

「え?な…に、してるの…!?」

「我慢は身体に悪いからな、俺が出してやる。」

「やっ、いやだよ!自分で勝手にするから!お願いだから離して、あっちに行ってて…!」

「却下だ」

「ぁっ!」


イヤイヤと頭を振り涙目になっているユナンの中心を優しい手つきで包んで、言葉も強引に引っ込めさせる。急な事に驚いたのか、いつもより高い声音が上からシンドバッドの鼓膜を刺激した。触発されたように扱きあげれば女の嬌声にも似たそれが吐息とともに聞こえてくる。


「シンドバッド、やめてよぉ…っ」

「お前、女みたいな声してるぞ。」

「ちがっ…僕は…や、なのに……は、あぁっ…」


真っ赤な耳を喰んでやると抵抗を続けていた身体がふるりと震え、はぁっと熱を孕んだ呼吸が聞こえた。


「ぁ…もう…もう、出ちゃ……おしっこ出ちゃうぅっ…」

「ん、出して良いぞ。」

「んぁあっ、や、やだ…!シンっ…見ちゃ、やぁ……あっあぁ!」


切羽詰まった声は次第に大きくなって湿った空気に振動する。ぽろぽろと溢れる涙に濡らされたシンドバッドの手が更に激しく上下し、先端を親指で圧すれば、瞬間ユナンの全身がびくりと跳ねて武骨な手に支えられた半勃ちの肉棒は透明な液体を勢いよく放つ。ひと気のない闇に水音が響き、やがて果実酒の仄甘さも入り混じるアンモニア臭が二人の鼻孔を擽った。出し切った先から滴る水分を切ってやると脱力した身体が寄り掛かってきて。抱きとめれば乱れた息の合間に鼻を啜る音が届く。


「ふあ…ぁ、あぁ……」

「たくさん出たなぁ。」

「はぁ…いじわる…っ……なんで、こんなこと…!」

「よしよし、俺がわるかった。」

「バカ!シンドバッドなんてきらいだよっ…。もう一緒に散歩してあげないんだから…!」


しゃくりあげ拗ねるユナンの肩口で満足げ笑みを浮かべるシンドバッドはあやすようにしてその髪を梳き、首筋や鎖骨に唇を落とす。
視線の先には、暗がりの地面に出来たばかりの水溜りがあった。




20131212.


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