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※白龍が普通じゃないです。




俺は練白龍。ついに念願叶ってアリババ・サルージャ殿と付き合うことになった。シンドリアを大いに満喫し人生の春を謳歌しているとうっかり自分の地位を忘れそうになるが、シンドバッド殿を見かけては頭上に花をとばしている義姉上を見ていると俺も楽しんじゃおっかな〜!なんて思ってしまう今日この頃である。しかしそんな俺にも心配事はあり、その一つがアリババ殿の様子が少々おかしいということだ。以前よりも一緒にいることが多く他人の目を忍んでは手をつないだり物陰でいちゃいちゃしてみたりしているのだが近頃は何となしに避けられている気がする。いたずらをすると照れ隠しに小突かれたり髪を引っ張られたりジャーマンスープレックスかけられたりはされていたが、まさかそれが嫌だったというのだろうか。そう考えもしたのだが、俺に対してもちょっかいを出してくるし心の穏やかなあの方だから可能性はほとんどないだろう。だが俺以外の方々とは変わりなく接しているようでますます不安になる。今だってシンドリア王宮内の芝生の上でいつものように義姉上に花冠の製作指南をされている。シロツメクサを繊細に編んでいくアリババ殿は捜神記の天女のように可憐で見惚れてしまう。花冠を頭に被せば姫君のようだなぁとか妄想を膨らませていれば、ふいにアリババ殿がくしゃみをされた。続けざまにもう一つ豪快なくしゃみ。風邪でもひかれたのだろうか、心配だ。最近は南国の陽気に向かって暖かくはなってきたが、まだまだ夕べは冷えるし大風もこうして吹き荒れている。そういえば避けられるようになった頃、俺と居る時もよくくしゃみをしていたような。何かアリババ殿のくしゃみと俺が関係あるのだろうか。誰か医療や医術に長けた者は…あ、たしか夏黄文はその方面の魔法が使えたな。何か知っているかもしれない。ちょうど手前に居るしアリババ殿から距離もあるし聞いてみよう。夏黄文、つかぬことを尋ねるが今の時期風邪はひきやすいのだろうか。え?いや、俺に不調はないのだが、とある人がくしゃみをしているのだ。…花粉症?…風も強いし確かに可能性があるな。合点がいった、感謝する。なるほど、花粉症か。だが、それと俺とを結ぶものが思い当たらない。樹木や花から飛散する花粉が原因であろうが、俺は知らず識らず花粉を量産し振り撒いているのだろうか。でも俺はれっきとした人間だし、左腕は木製の義手となってしまったが…………ん…?もしかして、もしかしなくともそれしかないだろう。たぶん原因は、


「ザガン…」


ああぁあぁぁあああなんて迷宮を攻略してしまったんだ!!!!!!!アリババ殿との仲を深めるきっかけとなり感謝さえしていたのにまさか今になって仲を引き裂く根源となろうとは…なんだか馬鹿にしているようなザガンの笑みが浮かぶようだ。変態仮面蓮野郎め…憎たらしい。それでも俺にはやっとの思いで手に入れた力だ。手放す気などないしそれ以前に手放す術も知らない。本当に花粉症であれば収束するまでアリババ殿に近づくことすら出来ない。俺も原因の一つであるなら、俺にはもう打つ手がないじゃないか。…もう……もう…っ!!



花粉飛散器・白龍



「アリババどのぉ〜……はっ!ゆ、夢…?」




20130313.


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