※会話のみです。
「アリババ殿!」
「白龍…?どうした、血相変えて走ってきて。」
「捜し…ゼェ…ました、ハァ…よ…!ゼェ…ハァ…」
「お、落ち着けよ。どんだけ走ったの?お疲れ様。」
「いえ、いち早くあなたにお伝えしたかったもので…」
「伝えたいこと?そんなに重要な用件なのか?」
「はい…重要で重大なものです。」
「おぉ…」
「しかも今日限定です。」
「限定とかあるの!?」
「そう、今日でなければ意味がないのです!」
「な、なんだってー!? おい、早く聞かせてくれよ!」
「ふふふ、そう焦らず。」
「…さっきまで焦ってたのお前だよね?」
「それはですね…」
「白龍スルースキルなんか持ってたっけ…まあいいや。うん、何なんだ?」
「それは……今日が桃の節句『雛祭り』だということですっ…!」
「な、なんだってー!? えっ、すっげーくだらねぇんだけど…えっ?」
「雛祭り、なんです…」
「声潜めてんじゃねぇよ、耳ンとこのそのヒョロッと伸びてる髪の毛むしるぞ。」
「やめてください、これは兄上たちを忘れぬよう模倣した大事な髪型ですから…」
「あ、ごめん…」
「気にしないでください…アリババ殿がこれを着てくださるなら俺は大丈夫です。」
「ん?綺麗な色だな。赤とか紫、萌葱…」
「十二単という正装です。」
「ああ、ちらっと本で読んだことあるぜ。たしかずっと東方の国の民族衣装だよな。」
「はい、これをぜひ着ていただきたいんです。着付けは俺の侍女が手伝いますので。」
「んー…じゃあとりあえず着替えてみるよ。」
「あっ…」
「どうした?」
「お、俺も着付けは心得ておりますので今ここで着替えませんか?」
「侍女さん、よろしくお願いします。」
「あぁっ、アリババ殿ぉおおおぅ!」
「着替え終わったぜー。」
「あ、お疲れ様です…」
「お前あんなことで体育座りして泣いてたの…?おっ、白龍も似たような衣装に着替えたのか。カリギヌ、だっけ?鮮やかな青がピッタリだな!」
「ありがとうございます。アリババ殿も、よくお似合いで。たいへん可愛らしい。」
「はぁ?ふざけたこと言うなよ。」
「だってそれ、女性ものですし。」
「…はぁ?ふざけたこと言うなよ。」
「本当ですよ?ほら。」
「あ、これこれ。この本を前に読ん……」
「ね?十二単は女性の衣装です。」
「……嵌められた…」
「今日は雛祭りということで、アリババ殿にはお雛様になっていただきました。」
「オヒナサマ…?」
「まあ、皇后にあたる人物ですね。」
「皇…后!?」
「ちなみに俺はそれの対というか、つ、番とでも言いましょうか…お内裏様になってみました。」
「なんで自分の言葉に照れてんだよ。」
「お内裏様は天皇とか皇帝です。つまりは俺とアリババ殿は夫婦ということでですね…」
「うるさいよむっつり皇子。」
「めげません!」
「なんでここで強気を発揮するんだよ。」
「今日は攻めていこうかと思いまして。」
「また今度お願いしたいな。」
「ともかく、これでアリババ殿は俺の妻ということです!」
「いや違うだろ!」
「照れずとも良いのですよ。俺はあなたの夫…ふふっ…なのですから。」
「おい、途中悦に入っただろ。ふふっ…て、顔面だらしないぞ。」
「今日だけですから、お願いします!悦に入らせてください…!」
「えらい直球だな……わかったよ、本当に今日だけだからな。この格好だから外にも出ねぇ。」
「はっ、はい…!それでは、雛祭りを楽しみましょう!」
「ああ!…って、あれっ?なんでお姫さま抱っこ?ねえ、どこ行くの。そんなに腕の力あったっけ?ねえ…」
「さあアリババ殿、夫婦ですから夫婦らしいことを!いざ、姫始め!」
「それなんか違うと思うよ白龍くん!? ねえ、聞いてる?ねえ!? …いやぁああああああああああ!!!」
「…? 今、アリババさんの悲鳴が聴こえたような…」
「本当かいモルさん?またシャルルカンおにいさんと修行してるんじゃないかな?」
「きっとそうですね。アラジン、私たちも負けないよう修行しましょう…!」
「うん!」
20130303.