佐久間は時々、どこか遠い所を見ているような目をする。
それは、ここ愛媛に来てから更に増した。

「…佐久間、」

グラウンドの丁度真ん中で空を仰ぎ、潮風に氷色の髪を弄ばせながら立つ佐久間に声をかけた。
ゆっくりと振り返った佐久間の紅眼に俺の姿が映る。
破けた眼帯から覗くそれは、吸い込まれそうなくらい輝いていた。

「…何してるんだ?」
「別に何も」

佐久間は俺から視線を外すと再び空を見上げた。
潮の匂いが鼻を掠める。
佐久間の隣に立ち、同じように空を仰ぐ。

「雲一つないな」

その言葉を聞いた佐久間が軽く身動ぎしたのを視界の端に捉えた。

「…ああ、真っ青、だ」
「…」

隣を振り返ると、あの目をした佐久間がいた。
口を開きかけて、やめた。
その目が何も言うなと言っているように見えたから。
再び空を仰ぐ。
閑散としたグラウンドを、潮を含んだ風が颯爽と吹き抜けていった。
佐久間は今、何を思い何を考えているのだろう。
そしてそれは果たして俺達と同じなのだろうか。




∴ その目が見ているものは、
(その紅眼の内に広がる世界は、)



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