星がきれいだから、円堂に頼んで、部屋を空けてもらって、彼を連れ出してみた。
強引に手を引いて。

「なんだよ豪炎寺?」
「いいから、ほら」

こんなことをするのは何年振りか。
母が生きていた幼い頃に、夕香に見せてやりたい景色があった時だとか手を引いてやった気がする。
困惑しつつも佐久間は大人しく手を握られたまま着いて来てくれる。
次第に楽しそうに笑みを浮かべ、クスクスと笑う声も聞こえてきた。
円堂の部屋の扉を開ければ、星が待っている。
驚かせたくて、カーテンを閉めて、ろうそくを1つだけ置いておいた。
古い扉が開く音も味がある。

「ここ、円堂の部屋だろ?」
「あぁ。見せたいものがあって円堂に頼んだんだ」

遊びのように、唇に指を当てて、静かに、とジェスチャーすると、いたずらっ子のように佐久間も真似をする。
そのまま忍び足で、そおっと床が鳴らないように、窓まで誘導する。

「これを、見せたかったんだ」

カーテンを開け、ガラスも邪魔だから窓も開けた。
ふわりと風が舞い込んでくる。
満天の星空。
一等星しか見えない東京とは違って、空気がいい。
あまり星には詳しくないが、ここなら四等星ぐらいまで見えるのではないだろうか。
そう、素人が考察してしまうぐらいに空いっぱいに星が散らばっている。

「きれい…」

柄にもなく、お前の方が綺麗だよ、なんて言いそうになった。
まったく。キャラじゃない。
色素の薄い髪に星の明かりが反射して、風と共に揺れている。
前にカールしている髪が後ろに靡くと急に大人っぽく見える。

「ん?」

熱視線に気づいたのか、佐久間は振り替えって豪炎寺を見た。
何を、失礼なことを。
自覚すると途端に顔が熱くなって、耳が真っ赤になるのが伝わってくる。

「どうしたのか?」

穏やかに微笑む佐久間は、いつもの緊張した張ったような感じが消え、代わりにぽわぽわとしたゆるい雰囲
気を漂わせている。
自分はちゃんと許されているんだな、と思う。

「気にいったか?」
「ああ!ありがとう、豪炎寺」

ぎゅ、と手を握られ、またもや顔に熱が集まってしまう。
ああ、もう、どうしたんだ豪炎寺修也!
いつもの無表情はどこへ行った!
自問するが答えは出ない。
当たり前だ、答えなんてどこにもないのだから。
佐久間を見つめると、どきどきする。
佐久間といると、楽しくて、夕香と過ごすおもちゃ箱の中のように弾ける時間とは違い、星のように長く、儚くて、でも輝いていて。
佐久間と触れ合うと、心があたたかくなる。
これが人を愛することなのだと、気づいたのが半年前。
告白したのが、2週間前。
了承を得たのが、1週間前。
初デートは、3日前。
2人でイタリアエリアでショップ巡りをした。
…いけない。思い出に浸っている暇はない。

「どういたしまして」

挨拶を交わすのは、とても大事だと母が言っていた。
いつか大切な人が出来たとき、とても役立つから、と。

「いいな、こういうの。好き」
「何が?」
「こんなきれいな星を眺めれるのもそうだけど、『どういたしまして』って言葉。『ありがとう』がちゃんと伝わっているって分かるからさ」

照れて、がしがしと頭を掻く佐久間を見て、同じ男なんだなと再認識。
でも愛しい気持ちが消えることはない。

「ちゃんと、伝わってよかった」

星と星との間は、何光年と離れている。
でもどれだけ離れていても、この気持ちが伝わればいいなと思う。
愛している。

「本当にきれいだな」
「また、何かあったら教えてくれよ、豪炎寺!」

とにかく今は、繋がれた手から伝わりますように。

end

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まず、載せるのが遅くなってしまい申し訳ありません…!
ルウカちゃんから相互記念に頂きました…!
もう、豪佐久かわいい!!やっぱり、ルウカちゃんの書く豪佐久だいすきです!!
本当にありがとうございました!



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