※佐久間兄捏造
※↑に加えて源田、佐久間の兄弟捏造





「へえ、次郎ちゃん、兄貴がいんだ」

ざわめく教室の片隅で不動は佐久間と佐久間の机を囲んでいた。
こちらを向いて椅子の背に組んだ腕を乗せてそう確認してきた不動に、佐久間は一つ頷いた。

「ああ。源田にもいるぞ」

それを聞いた不動は再び、へえ、と言いながら頬杖をついた。
佐久間を映す彼の双眸は、どこか愉快そうな色を滲ませている。

「なんかお前らの兄貴って、簡単に名前予想つくわ」
「?なんでだ?」

心底不思議そうな顔をする佐久間に胡乱げな目を向けて、一つため息を吐く。
大方、一郎と幸一郎とかだろ、と呆れながら言えば、佐久間が驚く気配が伝わってきた。
予想通りすぎて、なんだか笑えてくる。

「ま、いいけど。じゃあお前ら二人兄弟?」
「ん?いや、源田はあとお姉さんと妹、弟がいる。俺は姉様が一人」

不動は出された答えに少々驚きつつも、妙に納得してもいた。
源田の兄弟の多さ、佐久間の姉の存在。
無駄に良い源田の面倒見の良さと、行き届いた佐久間の髪等の手入れ。
きっとそれらはそれぞれの兄弟によるものだ。
佐久間に至ってはプラス源田で。

「んじゃ、次郎ちゃんのご兄弟にはご挨拶しねえとな」
「?」

首を傾げて自分を見遣った佐久間を見ながら、口端を吊り上げる。
そんな不動に気づかずに唸りながら思案していた佐久間はゆっくりと顔を上げ、真っすぐに不動を捉えた。
その顔は僅かに困惑している。

「よくわかんないけど、お前が兄様に挨拶したら多分ちょっとした惨劇になると思うぞ」
「惨劇とか言ってる時点でちょっとじゃねえだろ」

物騒な佐久間の言葉の意味を追及しようと更に口を開こうとした途端、廊下の方から女子の歓声が上がった。
ぎょっとしてそちらを向けば、開かれた教室の自動ドア付近は、人気の芸能人が現れたような人だかりになっており、そしてそこには綺麗な顔の男が立っていた。
その男は、忙しなく首を巡らせて教室内を見渡している。

「…なあ、あれってまさ「次郎!!」

お目当ての人物を見つけ、その綺麗な顔を綻ばせた男は、探し人の名を叫びながらこちらに一直線に駆けてくる。
呼ばれた本人はといえば、これまた嬉しそうにその男を見ていた。

「一郎兄っ、」

自分の兄、佐久間一郎を呼ぼうとしていた佐久間は、言い切る前にその兄に思い切り抱きしめられて苦しそうにもがいていた。
佐久間を苦しめている一郎は、幸せそうに佐久間の頭を撫で回しピンク色のオーラを周囲に撒き散らしていた。

「ああ次郎、やっぱりお前はいつ見ても可愛…ん?」

ばちり、と不動は今だに弟を愛でている一郎と目が合った。
思わず身を固くしていると、それに気づいた佐久間が一郎の腕から逃れ出て不動を背後に隠した。

「ええと、兄様。こいつは、その」

何故か焦っている佐久間を押しのけて、いい機会だと思った不動は一郎の前に自ら歩み出た。
一郎の橙眼が不動を捉えている。
そんな一郎を見返しながら不動は軽い自己紹介をして不敵に笑ってみせた。

「ま、よろしくお願いしまーす。お義兄さ、」

そこまで言った不動はしかし、次の瞬間には外気に曝された頭部を思い切り殴られていた。
あまりにも突然の事だったので流石の不動も対処仕切れずに、その鉄拳を真正面に受け止めてしまった。
痛みに悶絶しながら一郎を見遣れば、彼は仁王立ちで不動を見下ろしていた。
佐久間と同じ橙色の双眸は、氷の様に冷めていた。

「誰がお義兄さんだと?ただでさえあの幸一郎の弟が邪魔で邪魔で邪魔で仕方がないというのに、いかにも二重の意味で頭がおかしい貴様が入ってくるなど言語道断!俺の可愛い次郎は誰にも渡さん!嫁にもやらん!ふざけるのはその頭だけにしろ!」
「ちょっ兄様!俺は男だって言ってるでしょう!」

そこかよというツッコミを内心でしながら、不動は我知らず遠い目をして一郎を見上げた。
佐久間によく似た綺麗な男は、弟を溺愛する所謂ブラコンだった。
これは源田や鬼道以上に強敵だと本能的に感じとった不動は、思わずため息を吐いた。
そんな不動に顔を近づけて一郎は鋭い視線を不動に刺した。
柄にもなく肝を冷やしていた不動は、次の一郎の言葉に己の危機を察知した。

「それにお前、真帝国だかなんだか知らないが、随分次郎を傷物にしてくれたみたいだな。覚悟は出来ているんだろう?」

誰もが見惚れるであろう笑顔が、今の不動には悪魔、むしろそれ以上の何かに見えた。
このことが予想出来ていたから、佐久間は不動を庇っていたのだと今更気づいたが、時既に遅し。
視界の端には、青ざめて一郎の腕を必死に引いている佐久間の姿が映っていた。




∴ 第一印象は大切に
(思ったよりも、道は長く険しそうです)




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -