それは休日の部活前の事だった。

「ふあぁ、っと…」

電車から降りた俺は一つ欠伸してから、ホームを出て改札口を潜った。
ここから15分程度、重たいスポーツバッグを背負って俺達の学校、私立帝国学園へと歩かなければならない。
学園には寮があるから普段はこんな風に歩かなくてもいいのだが、今回の休日は帰省したために歩かなければならなくなったのだ。
まあ、ある意味一種の特訓だと俺は思う。
そうして駅から出ると、何やら騒がしい声が聞こえてきた。

「っおい、なんなんだよ!放せってば!」

その騒ぎの中心に目をやると見覚えのある綺麗な銀が見えた。

「佐久間…?何してんだ…って誰だあ?あいつら…」

何人かの男達の中に我らが帝国イレブンの姫(等と言ったらものすごい勢いで殴られるのだが)、佐久間がいた。
しかも、何やら腕を掴まれ今にも引きずられていきそうなところを踏ん張っているようだ。

「いいじゃーん。ね、遊び行こーよー」
「嫌だ!俺は男だし今から部活なんだよ!遊びに行く暇なんかない!」
「またまたーサボればいいじゃん!」
「そーそー、じゃー行こーぜ」
「痛っ…、放せよっ…!」

佐久間の身体が傾いた。
その隙を見てナンパ野郎共が歩き出す。
引きずられていく佐久間の目には、
それを見た俺はすぐさま肩にかけていたバッグからサッカーボールを取り出し、バッグを放り出した。

「佐久間伏せろ!」
「!」

佐久間が下へと身体を落とした瞬間、ナンパ野郎共の顔面に次々とボールが直撃した。
周りにいた無関係の奴らは、うわあ!?とか言いながら後ずさっていた。
そんな中、掴まれていた腕が自由になったのを確認した佐久間が転がっていた俺のボールを拾って一目散に俺のほうに駆けてきた。

「行くぞ佐久間!」

そして俺は左手は放り出していたバッグを、右手は佐久間の左手をとり学園に向かって走り出した。


部室に勢いよく駆け込んだ俺達は室内にあるベンチに座り、荒くなった呼吸を整えていた。
ふと隣の佐久間を見ると、俯いて掴まれていた右手を押さえながら下を向いていた。

「大丈夫、か?」

佐久間の髪に手を伸ばすと、ビクリと肩を震わせてこちらを見た。
その目には恐怖と安堵の色が混ざり合って涙が滲んでいた。
眼帯で隠されている方もきっと同じだろう。
そしてその身体はカタカタと震えていた。
そんな佐久間を俺の肩に寄り掛からせて、綺麗な銀髪をそっと撫でた。
今日はきっと佐久間を除くメンバーで急遽作戦会議だな、と思いながらみんなが来るのを待つことにした。




∴ 姫を守る騎士とでも言おうか



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