※吸血鬼パロ
吸血鬼風丸と人間佐久間







ピクリ、と細い肩が浮き上がった。
己の腰と背に回された腕が強さを増して、その肢体を引き寄せる。
そして自分も、相手の服を掴む手に力を込める。

「…、っ」

意識が少しずつ朦朧としてきた佐久間は、うっすらと閉じていた瞼を開いた。
すぐ横で自分の首筋に顔を埋める碧色の髪の持ち主を見遣る。
その髪の持ち主、風丸が軽く身じろいだ為に髪の隙間から覗いた耳は、いつものような弧を描く形ではなく、少し緩やかに尖っていた。

「か、ぜ…丸、」

名前を呼んだその瞬間、風丸が佐久間の首筋から顔を離した。
仕上げとでもいうかのように軽くその場所を舐めると、風丸はようやく佐久間を見た。
仄かに微笑んだ風丸はゆっくりと佐久間から離れ、ベッドへと倒れ込んだ。
その行動の始終を見届けた後、佐久間は先程まで風丸が顔を、正しくは口を付けていた首筋の一箇所を撫でながら、寝転んでいる風丸の隣に腰を下ろした。

「…前から思ってたんだけどさ、」
「ん?」

目を腕で覆っていた風丸が、その腕をずらしてできた隙間から佐久間を見つめた。
茶色の瞳を見下ろしながら、佐久間は首を傾げつつ続けた。

「男の血なんか吸って、気持ち悪くないのか?」
「…」

なんでそんな今更なことを、と思う反面、風丸は妙に納得してもいた。
吸血鬼といえば美女の血を吸うというイメージが根付いているからだ。
確かにその事については否定のしようなど皆無に等しいが、吸血鬼だって皆がみなそういうわけでは決してない。

「そもそも、血なんか美味くもないと思うんだけど」
「それは佐久間が人間だからそう思うんだろうな。俺たち吸血鬼は、血を吸わなきゃ生きてけない」

そんなもんかなあ、と唸る佐久間を見上げながら風丸は、ふと、揺れる氷色の髪に手を伸ばした。
髪に触れたまま起き上がり、掬った束に口づけを落とす。
驚いたように橙眼をいっぱいに開き己を見つめる佐久間を見ながら、風丸は僅かに口端を吊り上げた。

「それに、佐久間は特別」

何度も瞬きを繰り返す佐久間を見返しながら、ゆっくりと押し倒す。
布の上に散らばった髪が、光を反射してキラキラと輝く。
その眩しさに目を細めながら、風丸は再び微笑んだ。

「俺が選んだ恋人だからな」
「…なに、それ」

くすくすと己を見上げながら笑う佐久間の頬を撫でながら、風丸は目を閉じた。
吸血鬼は、血を貰う為の相手、つまりは恋人を選ぶ。
しかしそれは不特定でいいという訳ではなく、一人の血を吸えば、以降その相手以外の者から血を貰うことは出来ない。
言ってしまえば、相手の死期、それが吸血鬼の死期となる。

「運命を共に、かあ」

小さく佐久間が呟いた。
その声に目を開ければ、風丸を真っすぐに見つめて笑う佐久間がいた。

「ずっと一緒だからな、風丸」

自分に伸ばされた掌を手に取り、優しく握り返しながら、風丸も佐久間に笑みを見せた。

「…ああ、」

佐久間の指に自分の指を絡め、ベッドに沈むその体を、ゆっくりと抱きしめた。




∴ その全てを共有して
(運命さえも分かち合う)



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