「なあ、風丸」

碧が揺れる、さらり、さらりと。
振り返った茶色の瞳は、しっかりとその目に俺を映した。
何だ?と小さく首を傾げて笑う幼馴染みは、その足を少しだけ俺の元へと運んだ。
その姿に、眩しさを覚える。

「…円堂?」

どうしたんだよ、と。
風丸の顔が、ぐっと俺に近づいた。
風丸の目に映る、間抜けな顔の自分。
ふるふると左右に首を振り、俺は風丸へと微笑んだ。

「…いや、呼んだだけ、」

その返答に風丸は目をしばたたかせ、しばらくしてから苦笑した。

「何だよそれ」

呆れたように風丸は肩を竦めた後、俺の肩を叩いた。
俺が持つボールを、空いている手で指差しながら。

「ほら、早く行かないと練習時間無くなるぞ?」

そうして、風丸は俺に背を向ける。
そしてまた、すぐ目の前で、風丸の動きに合わせて碧色の髪が揺れた。
綺麗だなあ、と、小さい頃よりも遥かに伸びたその髪に手を延ばす。
だけど、それだけではどこか物足りなくて。
髪へと延ばした筈の俺の手は、風丸の頭を過ぎて、その華奢な体を抱きしめた。
ふわりと鼻を掠めた、ほんの少しだけ甘い香り。
風丸の首筋に顔を埋めて、俺は小さく呟いた。

「風丸、好きだ」

ぴくりと動いた風丸の体。
しかしその強張っていた体はすぐに力が抜けて、俺が風丸の肩に回している手に、俺よりも少しだけ小さい手を重ねた。
知っていると小さな子供をあやすように、風丸は優しく俺の手を撫でた。
その行為に、俺は酷く安心するのだった。
それと同時に、どうしようもない愛しさが込み上げる。
風丸の手に自分の手を絡めながら、自分でも驚くくらいの弱々しい声で呟いた。

「好き」
「うん」

何度も何度も、言い飽きる程に、聞き飽きる程に。
そこで俺は顔を上げて、頭上の風丸を仰いだ。

「風丸は?」

それに風丸は目を見開いて、顔を背けた。
ゆっくりとした時間が流れて、漸く聞き慣れた少し低い声が俺の耳に届いた。

「…好き、だ」

髪の間からちらりと見えた耳は、誰が見てもわかるほどに真っ赤になっていた。
それを見て緩む頬を止めることもせずに、俺は風丸を抱きしめる腕の強さを少しだけ、強めた。




∴ 飽きる程に愛を紡いで
(それでもまだ、伝えきれやしないんだ)


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