ライオコット島に来て、久しぶりの二度目のオフ、とでもいうのだろうか。
実際、選手のみんなも思い思いに寛いでいるようで。
いつもと変わらずに特訓したり、部屋でのんびり過ごしたり、出かけたり。
かくいう私も3番目にあたるわけで。

「―それで木暮くんったらまた悪戯しちゃったんです!」

スプーンをわなわなと握りしめながら、目の前の彼女、春奈ちゃんは声を荒げた。
落ち着いて、と少し慌てながら私はきょろきょろと辺りを見回す。
幸い店内もお昼時ということもありざわついていて、あまり声は響かなかったようだった。
それを確認して私は思わず、ふうと息をついて肩の力を抜いた。
私の隣に座る冬花さんは困ったように笑っていた。

「すっ、すみません…つい…」
「ううん、大丈夫よ」

頭を下げて礼儀正しく謝ってくる春奈ちゃんに、私は笑って返事を返す。
そうして、ふと思い出して手にしていたフォークを置いた。
春奈ちゃんと冬花さんが私を見た。

「これからどうしようか?」

出かける、と言っても最大の目的は買い出しだった。
一つ買えばあれが無かった、これが切れてた、と次から次へと買わなければならないものを思い出して、結局お昼になってしまったのだ。
お腹も空いていたので近くにあった飲食店に入って、現在に至る。
帰る、という選択肢もあるけれど、なんだか勿体ない気がしてならないのだ。

「あの、」

遠慮がちに発せられた声は、これまた遠慮がちに小さく手を挙げる冬花さんのものだった。
頬杖をついて思案していた春奈ちゃんが、どうぞ冬花さん!と意見を述べさせるべく冬花さんに向き直っていた。

「あ、えっと、…お買い物、なんて、どうですか?」

そう言った後、冬花さんは左手を胸の前で握りしめると、ありきたりですよね、と目を伏せながら言った。
そこで私はそういえば、と思い出した。
1度目のオフは買い物というより、どちらかと言えばお土産選びに近かった。
そう考えると、お買い物という選択肢は良いものだと思う。
それに一度、「マネージャー」としてではなく「友達」として二人と出かけてみたかったのも事実。
顔を上げると、同じことを思っていたのだろう、ニコリと笑う春奈ちゃんと目が合った。
そんな春奈ちゃんに頷いて、私は冬花さんを見た。

「ありきたりが、良いと思うな!」

そう告げると冬花さんはその大きな瞳をしばたたかせた。

「い、良いんですか…?」
「もっちろん!」

春奈ちゃんが立ち上がって、ウインクをしながら人差し指を立てた。

「私、良いお店知ってますよ!可愛い服とか小物とかたくさん売ってるんです!ここから近いですし!」

それを聞いて私と冬花さんは目を輝かせた。

「わあ!行きたい!行こうよ冬花さん!」
「はい!」
「じゃあ早く行きましょう!」

そうと決まれば、即行動。
席から立ち上がって会計を済ませ、お店から出ると、春奈ちゃんが私と冬花さんの手を取って走り出した。

「は、春奈ちゃん!そんなに急がなくても…」
「出来るだけ長くショッピングしたいじゃないですか!」

さあ、こっちです!と、ぐいぐい私達を誘導する春奈ちゃんに、私と冬花さんは顔を見合わせて思わず笑った。
私は走りながら、ふと、留学している友達を思い浮かべた。
そういえば、夏未さんとも「友達」として一緒に出かけたことがない。

「…先輩!」
「えっ?」

スピードを落として私を振り向く春奈ちゃん。
その顔は、向日葵のような笑顔だった。

「今度は、夏未さんも一緒にショッピングしたいですね!」

その言葉は正に私が思っていた事だったから驚いた。
春奈ちゃんの後ろで走っている冬花さんも、私を見ながら、私も夏未さんとお話してみたいです。と小さく言って微笑んだ。
私は、そんな二人を交互に見て笑顔で頷いた。

「…そうね!今度は、夏未さんも!」

そうして前に向き直って走りながら、4人で何かお揃いできる物を買いたいな、なんて思ったのだった。




∴ We are girl!
(ショッピングの後は、恋バナ!)



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