気がついたら好きになっていた。
初めて自分の事を理解してくれた人だと、そう思った。
チームから孤立している自覚はあったし、それをさほど気に留めようとはしなかった。
正直に言えば、どうでもよかったのだ。
皆がそれぞれの主張や意志があるのと同様に、自分にだってそれらがある。
他人と協調せずにそれを曲げようとしなかったことが孤立の原因だと分かっていた。
それでも信念を貫き通した。
だって、どうせ自分を分かってくれないなら、もうどうだっていいじゃないか。
けれど、吹雪先輩は違った。
俺を見てくれる、理解してくれる。
それがただ嬉しくて幸せで。
だから惹かれた。
そんな吹雪先輩に。

「雪村はまだ子供だから」
「そんなことないです。本当に好きなんです」
「はは、嬉しいな。可愛い後輩に慕ってもらえて」

その言葉にムッとして眉を潜めれば、吹雪先輩に二度優しく頭を叩かれた。
そんなことをされたって、すぐに機嫌が良くなるほど子供ではないし、何よりその子供扱いが更に不快にさせるだけなのに。
ただ黙っているだけの俺に、吹雪先輩はにこりと笑いかけた。

「ほら、子供だ」
「な、」
「わかりやすいなあ、雪村は」

そう言われた途端、ああ、と思い当たって、そして急に恥ずかしくなった。
やっぱり自分はまだまだ子供なのだろう。
確かに自分には吹雪先輩のような大人の余裕なんてものは持ち合わせていないし、思えばやることなすことが露見している気がする。
何も言い返せぬまま肩だけを落としてため息を吐いた。
そうすれば再び頭を触られる感触がした。

「雪村、君はまだ子供だ」
「…」
「率直で純粋で、だからこそ素直だ」
「…でも、俺、」

言葉を紡ごうとすると、吹雪先輩は自分の唇に人差し指を当てて、静かにと示してきた。
それに従ってしまうのだから、吹雪先輩の言うことは正しいのだろう。

「わかっているさ」

え、と思わず素っ頓狂な声をあげると、吹雪先輩は可笑しそうに笑った。

「ありがとう、雪村」

僕なんかを好きになってくれて、と。
なんか、なんてそんなことないのに。
吹雪先輩だからこそ俺は惹かれたのに。

「吹雪先輩、」
「なんだい雪村」

吹雪先輩が微笑む、その笑顔にドキリと胸が高鳴った。
それがまた顔に出たのか、吹雪先輩がくすりと笑った。
分かりやすすぎるのも考え物だなんて考えながら、ちらりと吹雪先輩を見遣った。
そうすれば直ぐに視線が交差して。
ああもう、子供で何が悪い。
何も言わなくても貴方にこの想いが伝わるなら、このまま子供で構わない。

「好きです。吹雪先輩」
「うん。ありがとう」




∴ こどもだっていいじゃない
(伝わりやすいならそれはそれで)

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みやこさんへ/誕生日祝い



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