レンに彼女ができた。
相手はあの初音ミク先輩。
嬉しそうに語るレンは、幸せ一色そのものだった。


「…よかったね」
「やべー俺もう死んでもいい!」
「じゃあ死「拒否!」自分で言ったくせに」

ゴロゴロとバナナ型の抱き枕を抱きながら床を転がるレン。
転がる、止まる、叫ぶ、転がるをエンドレスで繰り返すレンを見てると、いい加減、

「ああもう邪魔!あたし勉強してるんだけど!」
「おお!珍しいじゃん!」
「は!?なにそれまるであたしがいつも勉強してないみたいじゃない!」
「いやだって本当だし…ま、迷惑なようですので私は退散致そう!精々頑張りたまえ!」
「ちょ、何様」
「俺様!」

扉が閉まるのと扉にあたしが投げた枕が当たるのは同時だった。

「はあ…逃げ足だけは早いんだから…」

もう、と呟いて机に向き直る。
でも集中できない。
くるくるとあたしの指の上で踊るシャーペン。
バナナとミカンの小さなストラップがついているオレンジ色の、レンとおそろいのシャーペン。
コロリ、とシャーペンがバランスを崩してノートの上に落ちた。

「…もう勉強やめよ」

机から離れてベッドに勢いよく倒れ込む。
顔だけを横に向けて、手のひらをきつく握り締めた。

「…知ってたよ。知ってたけど、」

一言、あなたの口から聞きたかった。
ミク先輩が好きなんだって。
そうしてくれれば、あたしだって少しは諦めがついた。

「ずっと、好きだったんだぞバカ」

この気持ちを伝えようと思ったことは、ない。
だって、あたしたちは、
ちらりとベッドの隣の棚に置いてある写真立てを見る。
それを手に取って見つめた。
そこに写るのは、5歳くらいのあたしとレン。「どうして…姉弟なんだろう」

もし姉弟じゃなかったとしても、あたしに勝ち目なんてなかったのかもしれない。
ずっと傍にいれるって思ってた。
なのに、レンはいとも簡単にあたしの手からすり抜けて離れていくんだ。
ああ、胸が、苦しい。
ベッドの上であたしは、ただひたすら声を押し殺して泣き続けた。






∴ 叶わない恋だと知っていた
(それでも君へと抱くこの想いは)
(計り知れないほど大きくて)




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