節水トイレ*霧崎花


霧崎第一のトイレは基本的にすべて洋式だ。
さすがはお坊ちゃん校等と呼ばれるだけあり、特に水回りは清潔かつ快適な物が用意されている。

が、しかし。
いくらお金をかけても、かなわない物事はある。
そう、自然だ。この夏、空は憎らしい程晴れ渡り雨は無く、あの現象が発生した。
深刻な水不足である。


「…節水の為トイレはまとめて流しましょう、か」

つまり、トイレは数人連れ立って行き、全員が済ませてからまとめて流す、ということだ。
確かにかなりの節水になるだろう。
水洗トイレは一度流すだけで多くの水を使うのだから。

「ふはっ、プライドが高ぇお坊っちゃん達には屈辱だろうな」

教室で、花宮が優等生でない素で呟こうと誰も気付かない。

納得のいかない顔をしつつも、特に仲のいい者に声をかけるため、ざわざわと生徒達がクラスを跨いで行き来している故だ。


「はーなみやっ」
「…原か」

花宮に真っ先に声をかけて来たのは原だった。

「聞いたっしょ。一緒にイこ?」
「変換がおかしい気がすんだけど」
「え〜なに花宮のエッチ〜」
「教室でそういう事言わねーなら、トイレぐらい付き合ってやるよ」
「やった、でもトイレだけじゃなくt「俺もいい?」

割り込んで来たのは瀬戸だった。
これ以上原にしゃべらすと、優等生の振りをしている花宮にとって不味い事を言い出しそうだったので、正直助かったと花宮は思う。口には出さないが。
瀬戸もわかってこのタイミングで被せたのだろう。

「構わねぇけど…そろそろ、「花宮!」
次に来たのは山崎だ。

「うわ〜ザキのくせに花宮に被せるとか〜」
「被せるのは俺の特許だよ」
「はあ!?うるせーよ原と瀬戸!花宮、悪ぃな」
「気にしてないから黙れ煩い」

あんまり騒ぐと目立つだろ、と花宮は付け足す。まあ既に目立ち始めていたが。

だが、いつものメンツには1人足りない。


タタタタタタ…スタ、


「ふぅ…すまない、花宮の黄金色に輝く聖水を採取すべく用意をしていたら遅れた」


『………』

「事前にこの事がわかっていればもっと完璧に用意出来たんだが。花宮バックにも欠陥があったんだな…更に改良しなくては」


『改良すべきなのはテメェの頭だふるはしぃぃぃ!!!』


全員が叫んだ。


「何言ってんの!?何言ってんの!?でも花宮バックは気になる!」
「花宮のすべてを見、聞き、保存、使用する為に必要な物を詰めたバックだが?」
「羨ま…っくねぇよ!俺だってICレコーダー持ってっしなっ」
「俺は監視カメラつけてるよん」
「ちなみに俺は盗聴器ね」
「ふっ…甘いな。俺の花宮バックの中には20を優に越える道具が入っている」

「「「負けた…!」」」

「負けたじゃねぇよバァカ!!!」

古橋が群を抜いて変態的だが、他の3人も結局は花宮に異常な執着を抱いている。恋愛感情をこじらせているというか、行き過ぎてしまったというか。
しかし花宮もそれを知り受け入れていたし、4人のことを気に入っていた。
花宮にしては珍しく、4人から向けられる愛(というには重過ぎるが)を、嬉しいと思うくらいには。

けれども。
「ば、ば、場所考えろっこのバカ共っ」



―――いつの間にか空気を読んだ生徒達は、教室に1人たりともいなかったことに、花宮は気付かない。
花宮真は4人に果てしなく愛されている…。
霧崎第一の常識であることも、真っ赤に頬を染めた花宮だけが、知らないのだった。






「それから、花宮の黄金色に輝く聖水のことを歴史上の異名に因んで、ジパング、と名付けようかと思うのだがどうだろうか?」
「「「賛成」」」



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