青を求め、そして2



この美しい生き物相手にヤることヤってたんだろ。

…汚して、痕つけやがったんだ。

黄瀬に初めての汚れを、消えない痕を。


ギリ、と誰となく歯噛みした。
気付いてはいても、本人の口から告げられて何も感じない訳はない。
しかし、ふるふると震える黄瀬をこれ以上、怯えさすのも本意でない。

捨てられたのなら、誰かが拾ってやらなければ。
その悲しみも寂しさも全てを拭ってやらなければ。

「黄瀬」
「…、…」
「黄瀬、俺らは責めねぇよ。昔の話だろ?今のお前はウチのエースだ」
「っ失礼っしょ!こんな…こんな…っ!バカなんス、俺…それに、」

「欲しいなら全部やる」

「…は…?」

「海常バスケ部の中心はお前だ。体だって欲しい奴選べ。気持ちは当然やる。
俺達はお前を、黄瀬涼太を愛してる。
気付いてただろーが。けど期待して、また捨てられるんじゃないかって、不安で目ぇ背けてただろ」

「、俺、は、そんな」

自信がない、か…さてと。

「愛してる、黄瀬。お前にこうやって触れられるなんて、運命を超えた幸せだよ」

相変わらずくせーな森山。
黄瀬の片手をとり口付ける仕草は、完全に童話の王子様気取りだ。
だが…それでいい。

「俺もな、お前のこと可愛いって思ってるし、大切にしたい」
「ちょっと生意気なときもあ(る)けどっ、そ(れ)もいいとこ(ろ)だと思う!」

援護射撃ご苦労さん。

「俺達はな、あの男みてーな天才じゃない。だから代わりに俺達が持ってるもん全部、お前にやる。
それでもあの男にかなわないか?」

ふるふる…ぶるぶる。
黄瀬の震えが、大きくなった。

「せ、せん…ぱぁ…ぃ」


……ここだな。
熱は込め過ぎるなよ、と視線で刺しつつ、同時に温もりを込めろと最終確認。
そして。

「!!んっふ、…ぁ……っん、えっ?…あ、んくっ…はぅ、」


代わる代わる唇を合わせ、舌をはわせ、さすり、撫で、体温をあてる。
黄瀬が安心するまで。
信じきり溺れておちるまで。何度でも何時間でも。

天才相手に一対一で勝てる筈もない。
痛い程思い知っている俺達。
ならば賢い手段は、何か。

「ぁあ…ん、せ、んぱ…」

バスケの試合でもコートでもない、卑怯だろうが知るものか。
黄瀬は…涼太は、俺達の、海常のものだ。

美しい生き物を捨てた天才という名の馬鹿は、いずれ初めて、凡才を妬むだろうな。


にやりと上がる口角だけは、誰一人隠せていなかった。




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