青を求め、そして*海黄

*青←黄含む海黄





青いユニフォーム。

それが、多数あったスカウトの中から海常を選んだ理由の、一つだったらしい。


「…失礼なことしたって、今なら思うんスよ」

ごめんなさい、と黄瀬は小さく呟いた。


俯きがちで、揺らぐ蜂蜜色の瞳は繊細な睫にかたどられ、この後輩は本当に美しい生き物なのだと感じる。
きらきらと輝く金糸のような髪、白く長い手足、傷一つない肌。
普段は閉ざされているが、開いたものに対しては真っ直ぐで素直な心。


その全てを手に入れ味わっていた男、キセキの世代のエース、青峰大輝。

常に周りを魅了する黄瀬が、逆に魅了され、身も心も全てを委ねた男。
…過去の話だが。


「その…距離おかれて、でも俺、あきらめ…れ、なくて。でも、一緒にいられないのはわかって…せめて、」

控えめに、嗚咽を小さくしゃくりあげて。

「せめて、あ…彼、を。感じられるとこ、いたくて…。青、が彼の色だったから」

「だから、ウチを選んだのか」
「すみません…っス」

黄瀬の俯いた視線は上がらない。
上げられないのだろう。


*


話さなければいけないことがある、と黄瀬が俺達の袖を引いたのは、I・Hで桐皇に敗れた三日後のミーティングの後だった。
折れてはいないが、それでも敗れたのは自分のせいだと負い目を感じている黄瀬に、何かしら立ち直りきる切欠が必要だと思っていた俺達は、直ぐに聞く体制をとった。

小堀が監督に目配せし、早川が黄瀬をミーティングルームから部室に手を引き連れ、森山が人払いをし、俺は主将として練習内容の指示を出しておいた。

それぞれが部室のベンチに座り、壁に寄りかかり、沈黙が数分。
微かに震える唇で、黄瀬が発した言葉。ぽろり一つ。


青いユニフォーム、と。


「…黄瀬、お前さ…あの男と付き合ってたんだよな?」
「っ!?…う、ぁ……」
「付き合ってたんだろ?」
「………はい」

…森山、気持ちはわかるがお前はだだ漏れ過ぎる、嫉妬が。
というか黄瀬、ここまで話して尚隠すつもりだったのか。

あの男…青峰大輝は憧れだ、と聞いていたが。
とっくに全員気付いていた。
そこに恋情が含まれていることも、それが一方的でなかったことも。
青峰と黄瀬は恋し合い、抱き合っていた。



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