一針一針、心を込めて1*謙光♀


四天+謙光♀



直線が多いから、実はそれほど難しくない。
個人的には少なくともマフラーよりマシ。
去年の秋に挫折して取り残された毛糸玉は、すっかり部屋の飾りと化した。
今年も何か挑戦してみようか。
編み物はてんでダメなことは自覚したけど、簡単なものやったら練習にいい。
小さなあみぐるみにでもして、千歳先輩にあげてもいいかもしれへん。

なんて、自然に口元が緩んで少しキモい。自分が。



「…ふ〜っ……とりあえず、」

今日はこんなもんかな。
朝練もあるし、そろそろ寝るべきや。
遅刻でもして、ないだろうけど万が一に勘繰られたら困る。
謙也くんはそんな気ぃきかんやろうけど、白石部長あたりは万が一があり得る。


「変なとこまで鋭過ぎて怖いねん」

自然にレギュラー達を思い浮かべてしまいながら、BGMにかけっぱなしにしとったクラシックを停止させて、布も針も片付ける。
布の正体は…生地。まあ、浴衣の。
義姉さんが、ウチにって浴衣を作ってくれた。
ついでに作り方まで教えてくれて、これで彼氏もイチコロやで、なんて言うから。

…てかイチコロって死語やない?
どうでもええけど。


今更イチコロとか、惚れ直すとかしてほしい訳ちゃうけど。
ただ去年はせっかく義姉さんが教えてくれたのに、マフラー、作れんかったし。
女らしいこと苦手やって知っとるのに、何でも丁寧に教えてくれる義姉さんの為や。



自分で言うのもなんやけど、勉強も運動も昔からよくできた。
手のかからん子どもやったらしい。
やけど家事とか女らしいことは大の苦手で、それでか理想の男は“家庭的なひと”
両親が仕事人間だったのも影響しとるんやろーな、別にキライやないけど。

そんなんやったウチにいわゆる“家庭的なこと”を教えてくれるのは、いつも義姉さん。
お節介とも思うけど、嫌やない。
ちょっと頑張ってみようと思ったのは、まあ何か単純やけど、彼氏ができてからや。



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