ねこ*財前受
財前光という少年が、不器用で無愛想で、そして脆いことはすぐにわかった。
虚勢をはって、毒にもならない毒を吐いて、自分を必死にまもる姿。
それは異常なほどに欲を煽った。
「白石ぶちょー」
「ん?どしたん財前」
「あつい」
「夏やからな」
九州から来た無我男は、財前光のことを「猫」のようだとよく言った。
俺はそれに同意する。
興味のない人間には一瞥もくれず。
敵とみなした人間は冷たく激しく威嚇し。
気を許した人間にはツンとしながらも甘え、やがて依存する。
野良猫か飼い猫か子猫か、とにかく可愛らしい猫だ。
俺はこの少年に、快楽という快楽を教えこんでどろどろに溶かしてしまいたい。
そう思う男は俺ひとりではないけども。
けれど中には、ツンとした部分を残して楽しみたいという男もいたし、いじめてぐちゃぐちゃに泣かせたい男もいる。
最終的には、自分に依存させ飼いたいという願望は、みな同じ。
「…財前」
「はーい」
「帰り、ぜんざい奢ったるから一緒に帰らん?二人で」
とりあえず、猫には餌付けだろう。
End
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