きみに熱中症*四天×財前
あんま真面目やない、俺が言うのも変やけど。
アンタら、サボり過ぎ。
暑い暑い日。
割りとハードな練習の最中に、くらりと目眩がした。
おそらく軽い熱中症。
申告すると部長自らが応急処置をしてくれた。
ベンチで一連の処置をし、アイスノン片手に連れられたのは、影になる比較的涼しい場所。
しばらく横になるようにと伝えられ、たった数分。
「財前〜」
「…白石ぶちょー、重い」
上に被さらんとってや。
余計に暑い…それに戻って来るの、早すぎる。
「指示だけ出して下がるのは、どうかと思うんスけど」
たぶんそうでしょ、白石部長?
「ええんよ、体調の悪い部員を看病するのも部長の仕事や♪」
「いや、これくらいすぐ戻れますし」
いかんやろ。つかアンタ絶対楽しんどる!腰に、手が…
「――…ーぃ、おーい!」
「おーい!白石ー、っておったおった!」
「…謙也……か」
「ひいっ!」
あーあ謙也さん、めちゃくちゃ睨まれとる。
声も低かったしなぁ、やっぱ白石部長は、爽やかな顔してタチ悪いひとや。
「う、き、金ちゃんが!小春とユウジ引っ張ってった食い倒れツアーから帰ってこんのや!」
なんか涼しぃなった気もする…。
「ハァ、何しとんや…。しゃーない、師範と探し行ってくる。謙也、部活の方は任せるで」
「え。俺も光につい「オサムちゃんもおらんしなぁ、誰か見とかななぁ」
「いや小石川が「あー財前も静かにひとりでおりたいよなァ、うん?」
謙也さん、諦めや。
諦めが大事なんや。
「…ひとりで寝ときます」
「ん、じゃあ行こか、謙・也」
「ひぃ、ひかる〜!!」
グッバイ。
たぶん死にはせぇへんから、がんばって下さい。
………――
みーん、みーんと蝉の音。
どうせなら洋楽聴きたい。
てかそろそろ戻るかなぁ、謙也さんは無事やろか。
金ちゃんらは…まだ帰ってないんやろな。金ちゃんがおったら、もっと賑やかな筈やから。
「ざーいぜーんくん」
「…いつ来るか、ひとり賭博してましたよ」
「勝ったと?」
「来ないって賭けた俺Eが大負けしました」
「ははっそりゃそうばい」
俺は何故かこのひとに気に入られとる。
理由は「猫みたいだから」らしい。意味わからん。
「白石達がおらんときば狙っちょったんよ」
「ずっと観察してたんスか?」
「練習しよったよ。謙也見よけばわかったたい」
「あーナルホド」
千歳先輩も割りと、白石部長とはちょっと方向違うけど、狡猾やから。
するり。と
「…心配したと」
「大したこと、ないんスけどね」
千歳先輩の大柄な体に見合う、大きな手が顎をすくう。
猫にするみたいに、顎の裏をするりと撫でられた。
「それでも。みーんな心配したばい」
「揃いも揃って…ウザイッスわ」
「ふふ、そうばいね。でも仕方ないばい」
「みんな、ひかるくんが大好きやけんね」
くちびるに、何かがあたった、気がした。
End
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