太陽に背を向け*裕太←観月
好きになっては、いけなかった。
僕は彼を傷つけることが役目の人間で、
恋だなんて甘ったるい感情に呑まれてしまっては、シナリオが崩れる。
そう、役目。
ルドルフを全国に。その為ならば、若い芽を潰すことも必要だから。
手駒はある。けれど有能な手駒となれば少ない。
少ない有能な手駒をもっとも有効に使う為に、僕はルドルフに呼ばれた。
僕自身も、学院の手駒として。
「いい具合に仕上がって来ましたね、裕太くん」
「観月さん!ホントですか!」
「もちろん。嘘なんてつきませんよ。君は確実に成長しています」
確実に成長している。
間違いなく伸びている。
そう、僕は嘘なんてついてない。
ただ隠しているだけ。
その、代償を。
「あの、観月さん」
「なんですか?」
「実は…ちょっと肩が痛くて」
ああ。
「見せて下さい。…ああ、うん……筋肉疲労のようです。しばらく冷やしておけば、痛みは治まりますよ」
「ありがとうございます」
痛みは治まりますよ。
そう、嘘はついてない。
一時的に痛みが治まるのは事実。
僕は嘘なんてついてない。
ただ、先をおしえないだけ。
「ごめんなさい、裕太くん」
「え?」
「、何でもないですよ、さあ!練習再開です!」
「あ、はいっ」
大丈夫。大丈夫。
裕太くんはきっと大丈夫。
そう、祈るしかできず。
学院の指示通りに僕は動く。
例えば操り人形だと言われれば、否定はできないままに。
End
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