楽園を夢見て*千歳←白石




千歳からは、なんだか甘い匂いがした。



溜まってるときに、たまたま、無数にいるであろうセフレの女の子達が、捕まらなかっただけ。ただそれだけ。
自分は見目麗しい、とかんなこと言えばナルシストやって笑われるかもやけど、少なくとも美丈夫である自信はある。

だから、女の子の代用品になれたんや、きっと。




「っ…ん゛、、ちぃとぉ…あっあっぁぁ――っ」
「むぞらしかねぇ、白石…ここ、感じると?」
「ぁ…っきも、ちっぇえっ!」



千歳がおらん、ある意味でいつも通りの部活をこなし、部誌を書き終えた頃にやーと千歳はやってきた。
からんころん、と下駄を鳴らしながら悠々と歩いてきた千歳を少し叱って。並んで帰路を歩めることに、内心歓喜していた。
無意識に遅くなりそうな足を急かし、高ぶる気持ちを抑えて他愛もない話をする帰り道。
じゃあここで、と手を振りかけて、俺は、俺の全てが停止した。


軽くかかんで目線を絡ませながら、

『…セックスせんと?』

甘い声。真っ直ぐ過ぎる言葉。甘い誘惑。

さまざまなことが頭によぎった。
からかわれてるだけや、とか。
隠していた気持ちを知られとったんか?、とか。
どうせこれは都合のいい夢なんや、とか。

けれど数秒後、浮かんだ想いは。



一度きりでも、暇つぶしでもええから、抱かれたい。
そんな、安直で素直なものやった。




「ん…ちとぉ、せ…はっあん―…ち、とせぇ…」

初めてのセックスやのに、感じるのは快感ばかり。
身体は痛いし苦しかったけど、心がいっぱいに満たされている気分で。


好き、だなんて言えないから。
千歳、と何度も何度も言った。


―……千歳には、伝わらない、けれど。


千歳に抱かれてから、もう一週間もたった。
まだ、というべきかもしれへん日数。
けれど俺にとっては、もう、や。



セックスは激しかった。
俺は何回も何回もイかされ、千歳もたぶん、二度や三度ではない程イった。
熱くて愛しい、白い精液。千歳の精液。
一滴だって溢したくなくて、フェラのときは全部飲んだ。
後ろに出された分も溢さないよう、キュウっと下半身を締めた。

誘われたシャワーを拒否して、身体の中に千歳を抱いたままに自宅に帰った。

自室に飛び込んで、身体の奥の、深い奥にある千歳の精液で、自慰をした。

そして、残った千歳の精液は小瓶につめて、引き出しの一番奥にしまった。
精液はナマモノやから、腐ってしまうんやろか…―。
そう、思いながら。



千歳ちとせチトセ。
大好き、愛してる。



「はあぁ……んっんっ、ち、とぉせえ!好きっ…ぁあ、好き!好き!愛してるぅ……」

小瓶を見つめながら、俺は一人、イく。
千歳と叫びながら、愛してると漏らしながら、何度も何度も。


千歳が、愛し過ぎるから。
千歳に、千歳に、千歳に千歳に、
また……抱かれたい。








そう願ったまま、それは願いのまま、
たくさんの季節が通りすぎている。



end



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