顔が一番!





「泣くなよ」
体を包む両腕が、ぎゅっと強くなった気がした。



「泣くなよ」

「…っ……」


すいません隊長…もう、もう泣き止むから……。

小さく嗚咽を漏らしながらも、唇を噛んで涙を拭う。懸命に涙を堪えようと唇を噛みしめていると、「だから…」と、頭上から隊長の声が降ってきた。
泣くような弱いやつなんて、ダメだよね。こんな時に泣くような、弱いやつなんて…。


「ごめんなさっ……」


“だから”
その後にどんな諫めの言葉がくるのか。怖くて聞きたくなくて遮るように紡いだ謝罪は、途中で勢いを失った。

だって。


「…泣くなよ…俺の居ないところで、泣くんじゃねぇよ…っ」


顔を上げた先に見えた、辛そうに眉を寄せて、少しだけ泣きそうな、隊長の表情。


「弱音吐いたって泣いたっていい。ただ…俺の前だけに、しろよ…」


じゃないと、慰められないだろ。

私の頭を抱きかかえて自分の胸に押し当てて、そう声を絞り出す隊長。触れ合うすべてのところから、隊長の想いが伝わってきて。こんなにも、こんなにも私のことを想って、心配して、心を痛めてくれる人がいる。
なんて……幸せなんだろう。


「ひっく、う、わああーん」


色んな想いが溢れてきて、抑えることが出来なくて。子どもみたいに声を上げて、羽織りを握りしめて泣き続けた。隊長はずっと私の頭を優しくなでながらひとことだけ…ひとことだけ、静かに言葉を紡いでくれた。


「お前の帰る場所はここだから」


不安も悲しみも私のすべてを包み込んでくれる、あなたがいるから、強くなれるよ。
なんてなんて、幸せなんだろう。

精一杯返した笑顔は泣き笑いみたいで、なんだその顔、なんて少しだけ呆れたような顔で笑った隊長。何気ないやりとりにさらに涙が溢れて止まらなくなってしまうけど、その涙を拭ってくれるのは、やっぱり日番谷隊長だから。
泣いて泣いて弱音を吐ききったら、泣き笑いなんかじゃない最高の笑顔をあなたに見せよう。

そう強く心に決めた、ある晴れた日。






がんばらなきゃならない、踏ん張らなきゃならない時だからこそ、涙や弱音は必要だと思います。他人を傷付けたり自分勝手なわがままになってはダメだけど、一人で抱え込むのはよくない…。みんなが耐え忍び、我慢する時だからこそ、自分なりの発散方法を見つけることが大切です。

そしてそれが済んだら、またあなたの笑顔が見たい。あなたの笑顔を待ち望んでいる人が、あなたの笑顔で勇気づけられる人が、沢山いるから。



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