愛でる−苺ミルク編−




「あふ…んっ…はぁっ…」



キュッと閉じられた唇から漏れる艶っぽい吐息。今自分が強いられている格好への抵抗か何か、名前は声を出すまいと唇を噛みながら小さく体を震わせていた。

ゆっくりと身体に手を這わせ、敏感な脇腹や脚の付け根を撫でると、ヒクヒクと腹が波打って身動ぎする。くすぐったいと抵抗するそれを、日番谷はやんわりと躱しながら愛撫し続ける。
名前は知らないのだろう。くすぐったいという感覚は、快感の前段階的存在であり、その感覚自体が快楽とリンクする。事実、口ではくすぐったいと子どものような事を言い続けるその裏で、名前の身体は着実に淫らに染まってきていた。



「ふ、んんっ…あ、ふっ…んや…」

「なんだ名前…随分と色っぽい声になってきたな」

「んっ…ち、ちが…ぁ…はふっ…」



乳首への快感は、焦らせば焦らすほど大きくなるらしい。蜜を滴らせる入り口やその上の小さな突起以上に、存分に興奮を煽ってから触ってやった方が、とても大きな快感を得られるという。実際、これまでの名前との行為の中でも、その事は明白だった。

ゆっくりと円を描くように揉みしだきながら、乳首に触れるか触れないか、ぎりぎりの所を指で掠める。時折ぎゅっと強めに揉めば、緩く勃ち上がってきていた先端がふるりと震えて芯を持っていく。
ただ漫然とそれを繰り返しているだけなのに、名前の呼吸は乱れ、切なげに寄った眉根が彼女の意思を示している。



「どうした、辛そうな顔して…お前の好きな、ぬるいやり口だろう?」

「は、は…あふ、んっ…いやぁ…」

「そんな眉間に皺寄せてちゃ、人のこと言えねえなぁ」

「っ、ひん…ッ」



ぐぐ…と、少しだけ力を込めて揉み上げる。たったそれだけの変化に、名前は過剰なまで反応する。ピクピクと小刻みに震える、まだ一切手を付けられていないはずの乳首。跨る日番谷の足の下では、先程からゆるゆると、何かを乞うように淫靡に腰が揺れていた。

つつ…と指先で乳首の周りをなぞり、爪でカリカリと寸前を引っ掻いてやる。その度にひくりと腰は跳ねて、物欲しそうに日番谷に擦り付けられる。はしたなく、いやらしい腰使い。勿論、名前にとっては無意識の行為だろう。
ただ、腰つきは無意識でも、“触って欲しい” 。この欲求には無意識でいられない。
堪えるように噛みしめられた唇の端から、だらしなく涎が垂れてくる。切なげに寄せられた眉も、上気した頬も、すべて名前の限界を示していた。



「はあっ…や…ッ…あんん…も、やだぁっ…」

「…ほら、名前…ちゃんと言えるだろう?」

「…さ…さわって…さわってくださ、い、ひうっ…はあぁぁん…!」



きゅうううっと、固く芯を持った乳首を摘み上げる。待ちに待った刺激に、喉を反らせて嬉しそうな嬌声を上げる名前。つい先程までのくだらない意地などどこかに忘れて、弾かれたようにその唇は声を溢れさせる。



「あはぁっ、んんっ…なんで…こんな…っ…ふあぁっ」



困惑し、戸惑う声。きゅっきゅっと乳首を抓る度に、不自然なほどに名前は背を仰け反らせる。
乳首だけで、どうしてこんなに。
そう言いたげな名前を、日番谷は至極満足そうに見下ろしていた。

目隠しをして、焦らして。
たったそれだけで、ここまで効果が出るのだから面白いものだ。視覚を奪われた身体は、失った分を補おうと、今ある感覚を無意識に研ぎ澄ませる。そして目からの情報がない分、頭では余計に考えてしまうのだ……今の自分の状況を。
目隠しをされ、後ろ手に縛られ、日番谷の好いようにされている。そんな自分を想像すれば、込み上げるのは羞恥心だけではないはずで。辱められているという興奮が、無理やり研ぎ澄まされた名前の感覚を、淫らな快感に変えていく。



「あん、んっ…あはっ…や、ああぁっ…」

「いや…?自分でねだったくせして、わがままな奴だな」

「へ、んっ…こんなの…っ…なんで…ぇ…ッ」

「怖がらなくてもいいだろう?乳首が気持ちよくて堪らない…そう素直に受け入れればいいだけだ」



自分の身体なのに、自分の知らない身体。怖いと感じるのも無理はないと、日番谷は肩をすくめて同情してみせる。してみせる、だけだが。

たっぷりと唾液を絡ませた舌で乳首を吸い上げて。じゅるじゅると音を立てれば、羞恥心に押し潰された名前は上ずった情けない声でキャンキャン鳴いて首を振る。
指でコリコリと転がして、弾いて。柔らかさもあり、それでいて固く尖って芯を持った弾力のある乳首独特の感触を、日番谷は気に入っていた。舌で、指で、堪能するように執拗に捏ねくりまわす日番谷に、名前はただひたすらされるがまま、翻弄されるしかない。



「ひ、う…うう…やあぁ…も、やだ…ぁ…」



涙でぐずぐずになった名前が、悲愴な声でやめてと訴える。
5分、10分、あるいは20分…どれくらい経っただろうか。時間も分からなくなるほど甚振られ続けた乳首は真っ赤に腫れ上がり、熱を持って固く勃ち上がっていた。

シュルリと目隠しの紐を取る。やはり顔が見える方がいいな、と、まるで他人事のように言ってのける日番谷に、しかし当の名前は反論する気力もない。久しぶりの明かりに眩しそうに目を細めた彼女だが、その瞳にいつものような冴えた光はなく、ただぼんやりと涙にけぶるだけだ。



「…もう…むりぃ…っ」

「それはおかしいな、名前…刺激が強いのは嫌だと、そう言ったのはお前だろう?」



くしゃりと、名前の顔が情けなく歪む。涙や涎やらでぐしゃぐしゃのその顔が、かわいそうなくらい被虐的で、背徳的で。

これだけの時間胸だけを弄り続けられて、その先を欲しくならないわけがない。もっと直接的な、溺れるような強い刺激が欲しい…と。
日番谷が跨る腰の下では、すでにぐっしょりと湿ったシーツと、ぬらぬらと灯りに照らされる太ももが揺れていた。そういう身体に仕立てたのも日番谷であり、普段ならとっくに与えてやっているであろう時間。

だがしかし、今夜は話が違うのだ。

そうやって更なる快感を欲するような身体に作り上げたのは日番谷なのに、その日の気分、その日の趣向で与えてもらえないなど、名前からしてみればたまったものではないだろう。わかっていても、日番谷に、情けをかけてやろうなどという考えは毛頭なかった。



「ち…ちくび、は…もう…やだぁ…っ」



布団に転がされ、身体の自由も奪われて、劣情と理性の狭間で揺れる名前のぐずぐずに溶けた哀れともいえる表情が好きでたまらない。か細い声で肩を震わせてやめてと訴えるそれに、日番谷の身体をぞくりと昂揚感が駆け抜ける。



「…残念だが、そのおねだりは聞いてやれないな」



ぺろりと唇を舐めて、目の前の獲物にかぶりつく。白い肌に映える真っ赤に腫れたそれは、得も言われぬ淫靡さと罪深さを孕んでいる。
乳首、その一語さえも口に出すのがやっとな初心な名前の、精一杯のおねだり。聞いてやりたいのは山々だが、生憎と今夜は趣向が違う。
いつもならきちんとおねだり出来さえすれば聞いてもらえるのに、と、絶望的とも言えるような表情でふるふると首を振る名前に、込み上げてくる愉悦と笑いを噛み殺して日番谷は囁いた。
お互い様だ、と。



「その代わり、今夜は俺も本番としけ込むことは出来ないんだ……お互い様だろう?」

「っ、うう…なん、で…ッ」



お互い我慢して辛いのならば、そもそもどうしてこんなことをするのかと、問われた所で日番谷は「ただやってみたかったから」と、そう答えるだけだしそれしか答えようがない。

素直にいつものコースを頂くのも勿論良いが、日々それだけではやはり面白くない。せっかく素晴らしい食材があるのだ。料理の仕方は選り取り見取り、味わい方も多岐に渡る方が楽しいに決まっている。無論、楽しいのは日番谷だけだと、そんなことは言うだけ手間な話である。



「大丈夫、お前ならここだけでもイけるだろうよ」



そう言って、日番谷は愉快そうに口端を上げてみせた。そのあまりに残虐的で非情な色の瞳に、名前の身体がぶるりと戦慄いて縮こまる。どう足掻いても変えられない展開を悟って、睫毛を震わせながら静かに目を伏せるその姿は、まるで小動物が見せる服従のポーズだ。



「そう固くなるなよ、イければ楽になるのはお前の方だろう?」

「ッ…そういう問題じゃ、な…っひあぁん!」



じゅるるるっと吸い上げた乳首に、歯を食い込ませて日番谷が噛みついた。一方では敏感な先端のくぼみを尖った爪でカリカリと引っ掻いて、抉って。見せ付けるように伸ばされた舌で上下左右くまなく舐め弾かれる度に、背を反らせて甘い痺れに酔って。
今までの生易しい責め方とは違う、本気で乳首だけでイかせようとしている愛撫に、名前は涎を垂らして淫らに快感に喘ぐ。



「あはっ、は、ああぁっ…ひ、んんん゛っ!」

「ここ…気持ちよくて堪らないんだろう?名前」

「ひゃ、だ、ッ…あひっ…すごいぃぃ…っ!」



跨った腰のその下、ひくひくと秘部が収縮し始める。無意識に絶頂を迎えようと中をきゅうううっと締める名前に、日番谷の愛撫もさらに激しさを増していく。
ザラザラとした舌で満遍なく嬲り、歯で扱きながら指と爪ですり潰すように擦り合わせる。今の名前にとって、加減された痛みは快感の増幅装置。甘い痛みはジンジンと痺れるような快感をもたらし、乳首をさらに敏感に、より深い快楽に変えていくのだ。



「はあぁッ…あうんっ、ううう…ッ…ひゃあぁぁ…」

「やらしい顔…気持ちよくてしょうがないって表情してるぜ」



指先舌先と共に、低く掠れて甘い、身体の芯に響くような声色でもって言葉でも責める。辱めながら、それでいて全てを許容する、唆し、誘って、宥めながらも追い詰めようとする嗜虐的な唇。頭の中まで直接犯されているような錯覚にさえ陥るその音色に、名前は思考力と判断力、そして理性を奪われていく。



「あっあっ、や、ら…ァ、ひうっ…ま、まって、だめ、らめえぇぇッ」

「腰、痙攣してきてるな…もうイきそうなんだろ」

「ひぐ、ぅ、ああぁッ…やら、や、あっあっあぁっ」

「…ほら、イけよ」

「ッーーー!!」



日番谷が静かに囁いた瞬間、全身を強張らせて名前の息が詰まる。声も出せないまま身体が仰け反って、直後にガクンガクンと激しく痙攣する。最後に思いっきり吸い上げて、ぢゅぽっと音を立てながら解放してやると、だらしなく涎を垂らして肩で息をする名前はぐったりとシーツに沈んだ。



「ほら、できただろ」



満足そうに言ってのける日番谷に、名前は何一つ言葉を返すことができない。本当に乳首だけで達してしまったという衝撃と、迫ってくる羞恥心。自分の身体が自分で信じられない、そんな顔で情けなく横たわる名前を、日番谷は愉しげに見下ろしていた。

絶頂の余韻に震える身体と、迫り出され強調された胸。その先端の乳首は、日番谷自身もこれまで見たことのないくらい真っ赤に腫れて勃ち上がっていた。
初心で無垢で純粋な名前自身と反比例するように、その身体はより淫乱に欲に塗れたものに作り変えられていく。仕立てているのは他の誰でもない日番谷自身であって、だからこそ、今夜のこの状況は、日番谷にとって一つのゴールでもあった。
今日まで一生懸命育ててきた可愛い可愛い恋人が、乳首だけでイけるようになったのだ。達成感もひとしおで、そしてまた今後の楽しみ方が増えたという嬉しいおまけも付いている。



「乳首、すごいことになってるな…ビンビンに尖って、こんなの、俺以外になんて見せられないなぁ…?」



甚振る台詞に、名前は蕩けた瞳からぽろぽろと涙を零して情けなく顔を歪めた。そんな名前を優しく口付けてあやしながら、一方でいたずらに乳首を摘まんで弄んで。翻弄するその様は非道と罵られても致し方ない。

啜り泣く名前を後目に、スルリと前を寛げた日番谷は、おもむろに己自身を取り出すと、既に勃ち上がっているそれをゆるゆると手で扱きだす。



「ひゃあ、なっ…た、たいちょう…!?」



突然目の前に抛り出された日番谷自身に、驚いて顔を赤らめる名前が声を上げた。咥えろということなのか、と訊きたげな目線に首を振ると、名前の瞳に一瞬期待とも取れるような揺らめきが。
乳首でイけたところで、肝心の場所は据え置かれたまま。持て余す劣情を隠せない名前に、日番谷は心底憐れむような、それでいて嗜虐心たっぷりの冷徹な瞳を向ける。
今、震えるその下肢を貫いたならば、きっとあっという間に昇り詰めて、彼女は自身にとって最高に気持ちよく快楽を解放出来ることだろう。それでもやはり、残念ながら今夜は胸だけと決めているのだ。



「何度も言っただろう?今夜はここだけだ」

「っ…なら、その…そ、それ、は…?」

「ああ、お前はあまり知らないだろうがな…こういう遊び方もある」



咥えもしない、挿入もなし、それなら一体その勃ち上がったものはどうするのかと、自分がしている質問の内容に自分で赤くなりながら問う名前に、思わず笑い出しそうになるのを堪えて日番谷は答える。…否、行動で示して見せた。



「やああっ、な、なにっ…なにして…!?」

「言っただろう、こういうやり方もあるって…まあ、俗に言う、パイズリ…ってやつか」



むにゅりと胸を寄せて、ググっと挿し込んで。悲鳴を上げる名前を余所に、先走りを絡めながらぐちぐちとスライドさせる。

お世辞にもふくよかとは言い難いそれは、日番谷自身を挟んでみても半分も隠れない。なけなしの谷間で果たしてどれだけ満足できるのか、などという指摘は、日番谷にとってはほとほと無粋な話である。
そもそもこれくらいは想定内であって、むしろ、名前のまっさらで柔らかな白い肌に存在する己の淫欲に塗れたソレを、その慎ましい大きさの胸がより背徳的に際立たせていて、想像以上に腰に来る…なんて。名前が聞いたら泣いて逃げ出したくなるような感想を、日番谷は脳内で繰り広げていた。

何より、パイズリ、などという卑俗的なことを、そういう世界とは真逆にいる彼女に行っているという事実が、どうしようもなく日番谷を興奮させるのだ。



「あっ、は…や、やだっ…こんなの…んんうっ」

「はっ…そういう割には、気持ちよさそうな声出してるじゃねえか」



ぬちょぬちょと挿入を繰り返しながら、日番谷自身と乳首が擦れるようにしてやると、途端に名前の声が甘くなる。普段感じることのない、乳首とそれが擦れ合う何とも言えない感触。名前にとっても日番谷にとっても、興奮を煽ると共に甘く突き抜ける快楽。
つい今しがた乳首で達したばかりのそこをこんな形で責められる。その快感に名前が堪えられるはずもなく、あっけなく再び絶頂への階段を駆け昇っていく。



「あはッ、ひうっ、ああぁん、だ、めっ…また、きちゃう…ッ」



無意識の内に腰を浮かせて、ねだるように胸を迫り出す名前。無骨な肉棒でぐりぐり、コロコロと乳首を擦られ転がされて、疼くような痺れるような快感に名前の身体は打ち震える。
与えられるすべての刺激を絶頂へと昇華させようとする、理性の溶けたはしたないその姿に、口端を上げる日番谷の背中をぞくりと何かが駆けていく。



「ッ…えっろ…」



名前の胸で、とは言っても、ほとんど自分で扱いているに近い行為。それでも、感じる滑らかで吸い付くような肌の温かさに、次第に日番谷の吐息は短く荒くなってくる。何より、無垢な名前を蹂躙し汚して、理性で固められた初心な心を陥落させることで満たされる支配欲と独占欲が、心地よく日番谷の昂ぶりを煽っていくのだ。

動く腰と手が一段と速くなり、ゴリゴリと擦れる乳首に、上がる嬌声が切羽詰まったものになっていく。焼け落ちそうに熱い先端に、首を振りたくって喘ぐ名前。跳ね上がる腰がひくりと痙攣した、瞬間。



「ああぁっ、ああっ、ひゃ、ッ、はあぁっ、んああぁぁッ…!!」



甲高い悲鳴を上げた名前が二度目の絶頂を迎えてから少し遅れて、荒く呼吸を繰り返すその胸元にどぴゅりと精が放たれる。最後の一滴まで絞り出すように扱いて、名前の肌を汚していく。



「あ…あ…は…」

「…ほう、これは中々…」



日番谷の暗く鋭く光る瞳に映る、白濁に塗れた、真っ赤に熟れる二粒の小さな果実。
メインディッシュからデザートにまでなるのか、と、愉しげに唇を舐めて一人頷く日番谷のその表情を、半壊した意識の中で虚ろに宙を見続ける名前が知ることは、終ぞなかった。







今までで最高に変態くさい日番谷さんが出来上がりました。


 

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