小説 高山さんち。 | ナノ




高山さんちのお父さん
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俺と楓はハタから見れば仲の良い親子だ。一緒に朝食を摂り、一緒に通勤通学し、夕飯もなるべく一緒に食べるようにしている。テレビを見るとき楓はぴったりと横にくっついているし、風呂も一緒に入る。同じベッドで寝ている。(しかも、楓からのおやすみのホッペちゅー付き。)

楓の母親で俺の妻の椛さんは、楓が六歳のときに他界した。飛行機の墜落事故だった。高校まで、親の仕事の都合でアメリカにいた彼女は日本の大学へ進学した。親はアメリカに留まったので、久々に親子水入らずの時間を過ごす為に渡米する筈だった。
一緒に行けば良かったと、何度悔やんだことか。以来、俺は飛行機には乗れない。
椛さんの葬式で、俺は初めて楓の前で泣いた。二人だけになってからは堰を切ったように嗚咽が漏れ、目から鼻から出るもの出して泣いた。みっともないところを見せたくないという僅かな親としての矜恃で、顔を手で覆っていた。何より、黒い額縁に入れられた椛さんを見るのが辛かった。楓も泣いていた。当たり前だ。まだまだ母親に甘えたい盛りの年頃なのに、母親を亡くしてしまったのだから。それなのにこの子ときたら、情けなく床にへたり込んで泣いてる俺を抱き締めてくれた。小さな楓の体に縋り付いて、声が涸れるまで泣いた。

俺は楓を一生かけて愛し、大切にすると誓った。いなくなった椛さんの分まで、また、俺の椛さんに対する気持ちの分まで、愛を注ぐと決めた。

今やそれが親としての無償の愛ではなく、もっと醜い、欲望を伴った愛にすり替わってしまっていたとしても。



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