Chapter.74
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カーテンの隙間から朝日が差し込んできて眩しい。
昨夜までの雨は明け方にはあがって、今は雲間から太陽が覗いている。
「帰らなくて大丈夫だった?」
「一応親にメールはしといたから大丈夫じゃないかな」
まだベッドの中である。朝は少し肌寒く、互いに体をぴったりとくっつけあっていた。
「なんかタクト、悪い子になってきた」
「誰のせいで?」
クスクスと嬉しそうな笑い声が漏れてきて、額に鼻先が触れる。すりすりと、猫のように身を寄せてくる仁。
「んー、ずっとこのまま寝てたい」
全く起きる気がない。
それは俺も同じで。
「……あ!」
突然、何か思い出したように仁が声を上げる。驚いて顔を見上げると、少し不機嫌そうな眉の角度。
「タクト、ユタカと寝たの…?」
恨めしげな声に、思わず笑ってしまった。
「おい、何笑ってんの。真面目に聞いてるんだけど」
「ちが……寝たっていうのは、マスターも入れて三人で、同じベッドの上にいたってだけ」
「……本当に?」
「本当に」
なーんだ、と脱力した仁はまた俺を抱きしめる。
「ユタカ、あいつ後でシメる…」
「何もなかったってば」
「あいつのせいで勘違いした。ムカつく」
子供のような言い分に、やっぱり笑いが漏れてしまって。
それを咎めるように、仁が顎を指先で掬い、上を向かされた。
「あんまり人のこと笑う口は、塞いじゃうけど」
宣言通り、キスが俺の口を塞いだ。
「もう他の奴の隣で寝ないでね」
深く頷いて、誓う。
ずっと貴方の側にいる。
【終】
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