Chapter.55
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期末テストで会えなくなった。
夏休みなのに会えない日が多い。
避けられている、と思う。
何も変わらないような素振りでそういうことされると、結構キツい。
今日は、会えない日。
メールでも送ろうかと思って携帯を手に取ると、予期せぬ着信が携帯を震わせた。
「もしもし…」
『電話するのは久々だな、仁』
出るんじゃなかった、と後悔しても遅い。見覚えのある番号だとディスプレイの表示を見て思っていたら、ツツミだった。
「何、まだ番号の登録してたんだ」
『お前はとっくに消してたか?』
「当たり前」
ふふん、と電話の向こうで余裕の笑みが零れ出た。
『今から会えないか?』
「無理」
『つれないな。どうせ明日は仕事無いだろう?一晩くらい付き合ってくれ』
まだ週休日覚えてやがる。明日は水曜日で確かに仕事は休みだ。そんなこと、よく忘れずにいたものだ。
「嫌だね。ご存知の通り俺には付き合ってる相手がいるものですから」
『別に取って食おうなんて考えてないよ。そう警戒するな』
本当かよ、と心の中で訝る。節操無しのくせに。
「大体アンタ、奥さんいるだろ。さっさと家に帰れば?」
『ああ、それなら心配には及ばない』
告げる声音は全く変わらず、淡々としていて。
『離婚した』
ただそれだけ。たった一言。
無感情に放たれた言葉を、受け止めきれず絶句した。
『だからこちらはお気遣いなく……まぁ気遣いなんてしないか。とにかく待ってるよ。よく待ち合わせした駅の前だ』
一方的にそう述べて、最後にじゃあまたと付け加えて電話は切られた。
頭の中は混乱している。
離婚した?なんでだよ。結婚するって言ったから俺はあの時……なのになんだよそれ。
行き場のないやるせなさに、ぐしゃと前髪をかき上げた。
畜生、誰が行ってやるかよ。
またそうやって、俺を掻き乱すアンタの処へなんざ。
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