Chapter.35
---------- ----------
隣で寝息をたてる巧斗を、じーっと眺めていた。
こちらを向いて、体を丸めて眠っている。小さな子供みたいだ。顔にかかる髪をそっとどけて、頬に触れた。温かい。
「かーあい…」
まだあどけない寝顔。規則的な呼吸。
愛しくて、額にキスをして抱きしめた。
「ん…?」
「あ、起こした?」
「んん…」
少し身じろぎしただけで、また微睡みの中へ戻っていく巧斗。その手がくしゃっと胸のあたりのシャツを掴む。
「好きになってくれてありがとう、タクト」
好いた相手に好かれない痛みを知っているから、好いた相手に好かれる幸福を抱いて、眠った。
[ 35/75 ]
[*prev] [next#]
[目次]
[しおりを挟む]