小説 藤枝さんと吉川くん | ナノ




Chapter.35
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隣で寝息をたてる巧斗を、じーっと眺めていた。
こちらを向いて、体を丸めて眠っている。小さな子供みたいだ。顔にかかる髪をそっとどけて、頬に触れた。温かい。

「かーあい…」

まだあどけない寝顔。規則的な呼吸。
愛しくて、額にキスをして抱きしめた。

「ん…?」
「あ、起こした?」
「んん…」

少し身じろぎしただけで、また微睡みの中へ戻っていく巧斗。その手がくしゃっと胸のあたりのシャツを掴む。

「好きになってくれてありがとう、タクト」

好いた相手に好かれない痛みを知っているから、好いた相手に好かれる幸福を抱いて、眠った。


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