Chapter.34
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汚れた体は、同じく汚れてしまったシーツで強引に拭かれた。どうせ洗うんだからいい、とか仁は言っていた。
「洗いっこしよっかー」
シャワーの温度を確認しながら、仁が冗談っぽく笑っている。
「自分で洗おうよ…」
「じゃあタクトは自分でお尻の中のを掻き出して綺麗にするんだね?」
「う…」
してもらうのも、自分でするのも、恥ずかしいことに変わりはない。
「俺に見られながら自分の穴に指突っ込むよりは、俺にしてもらう方がいーんじゃないのー?」
「うぅ…」
そんな風に言われたら、選択肢は一つだけになる。
「じゃあ……仁がやってよ…」
「うん、いーよ」
あからさまに楽しそうな顔が恨めしい。
「じゃあ浴槽に手ぇついて、お尻コッチ見せて」
「………………」
「はーやーくー」
「…………はい」
観念して、言われた通りにした。
風呂場は明るくて嫌だ。隅々まで見られる。
ぬるめのシャワーが腰にかかって、足を伝って落ちていく。
「ちょっと我慢してね」
「うあ……っ」
仁の指が侵入してきて、中を掻き回した。ずるずると出し入れされる感覚と恥ずかしさで、変な気分だ。
「わー、いっぱい出しちゃったなー俺……あれ?タクト気持ち良くなってきちゃった?」
「ち、ちが…っ!」
「もっかいする?」
「!?」
「冗談だって。………はい、おしまい」
仁の手が離れて、すぐさま態勢を変えた。ちょっと腰が抜けそうだったのは隠したい。
ただ、向き合ったらそれはそれで恥ずかしい。恥ずかしいことだらけで嫌になってきた。
「体洗うねー」
泡立てたボディタオルで体を洗われる。
腕から肩、胸、腹へ。優しく丁寧にしてくれる。
「…ちゃんと気持ち良くなれた?」
右の太ももを洗いながら、仁が問う。
「……うん」
「怖かった?」
「怖くは、なかった」
気を遣ってくれたんだ。そう思うと、嬉しい。
「なら良かった」
ほっとしたようにふわりと笑う仁に、はい背中ー、と後ろを向かされる。
「……仁」
「なにー?」
「その…、全然怖くなかった、本当に。仁なら大丈夫って、……安心できたっていうか。えっと、何て言うか……仁のこと、好きになって良かった、と思ってる」
精一杯、自分が思うことを伝えたくて。でも、いざ口を開いてみると、上手く言えない。
仁の手が止まって、かと思ったら後ろから抱きすくめられた。仁の少し低めの体温をひたりと背中に感じる。
「もー何言ってんの!そんなこと言われたら、嬉し過ぎて死ぬ!」
顔が仁に見えてなくて良かった。照れ臭くて真っ赤になってるから。
「俺も、タクトがそんな風に俺を信じてくれるのすげー嬉しい。大好きだ、タクト」
熱っぽく囁く仁の声にドキドキしながら、この人となら忘れられそうだと思った。
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