南部弁男子の飼い方 | ナノ




9-@.友達っていろいろ

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「んだ、ゴールデンウィークは大会があるから帰らないよ。え?うーん、夏休みになってからかなぁ」

連休を目前にして、実家から電話がかかってきた。東京には慣れたか、と、いつ帰ってくるか、の確認だ。

「田植えはテルが頑張るからいいべ?……受験?どうせ大学行かねってへるべ〜。俺?頑張ってるよ勉強も。ゴールデンウィーク終わってから中間テストだけど。……ん、ちゃんとやるから。ハイハイ。へばね、また」

今日も四人集まって放課後勉強会をしたかったが、部活があってできなかった。竜介は家が和泉と同じマンションで、帰ったら一緒に勉強するらしい。たぶん、和泉に尻を叩かれないと、自分でテスト勉強なんかしないのだろう。
睦朗も、テスト勉強のためにノートを広げた。分からないところは明日、和泉か善治に聞いてみることにしよう。そう考えると、不思議と勉強も楽しく思えた。



翌日、登校した睦朗が真っ先に向かったのは、和泉の席だった。善治はまだ来ていなかった。

「いっちゃん、おはよ!」
「おはよう。どう?テスト勉強できてる?大会は明後日からだっけ」
「ん!昨日ちょっとわかんないとこあって……」

睦朗はノートをめくって、分からなかった部分を和泉に見せた。問題集のページもきちんと書き出してあったので、和泉も問題集を開いて睦朗の質問を聞く。

「ムツはえらいね。リュウとは大違い」
「昨日リュウが、帰ってからいっちゃんと勉強するって言ってたけど……」
「リュウは言われないとやれないからなぁ。部屋で待ち伏せして、とっ捕まえてやらせたよ」
「ハハ……、リュウらしい」

そういえば、とても嫌そうな顔で話していたことを思い出した。本当に勉強は好きじゃないのだろう。

「それに比べたらムツは手が掛からないし、ちゃんと自分でやれるし、えらいえらい」

特に何の意識もなく、和泉は睦朗の頭をよしよしと撫でた。
幼稚園の頃からずっと一緒だった、やんちゃな竜介に慣れすぎていて、睦朗は可愛い弟分のようだった。竜介は手を焼く弟分で、その差は天使と悪魔ほど。

「なんか、いっちゃんはお兄ちゃんみたいだね」
「あ、ごめん!つい……」
「俺ね、兄貴二人いるんだけど、いっちゃんは三番目の兄貴って気がする」

和泉の優しい手から、故郷の兄を思い出す。天朗と輝朗は元気にしているだろうか。毎日顔を合わせていた兄弟と、これだけ会わないのは初めてだった。

「ムツのお兄さんは、どんな人たち?」
「んっとねー、一番上はタカにぃで、頭も良くてしっかり者で、二番目のテルは不良」
「兄弟でも性格はバラバラなんだ」
「うん。いっつもテルと喧嘩して、タカに怒られる。怒ったらテルよりタカの方が恐いよ!」
「なんだか楽しそうだな」

一人っ子の和泉にとっては、竜介が兄弟のようなものだが、家が賑やかなのはどんな感じなのか分からない。それに、兄弟の話をする睦朗が楽しそうに見えて、少し羨ましかった。

「うーん、楽しいっていうか、ほんと喧嘩するときはムカツク!って思うけど。でも、こっち来てからは、ちょっとだけ寂しい気もするかな……」
「そっか。連休も、大会だから帰れないしな」
「うん。だからいっちゃん達みたいな友達ができて、本当に良かった。ありがと」
「なんか、そんな風に改めて言われると照れくさいな」
「へへ、そうだね」

二人揃って照れ笑いをしているうちに、竜介が席に戻り、遅刻ギリギリの善治も教室へ入ってきて、またいつもの学校生活が始まった。


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