南部弁男子の飼い方 | ナノ




8-A.文武両道はへっちょ

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「高総体とか言う前に、もっと頑張らなくちゃいけないことがあった……」

返却された英語の小テストを見つめて、睦朗は溜め息をついた。

「うわ、ひど」
「ぜんちゃん……ひどい」

後ろから睦朗の小テストを覗き見て、善治は鼻で笑った。丸よりペケが多い答案は竜介だけで充分だと思う。

「ぜんちゃんは?」
「満点」
「えぇー!」

英単語集からしか出題されないのに、なんで点数取れないのかが、善治は不思議でならない。睦朗は竜介とは違ってちゃんと直前まで英単語集を見て勉強しているから、余計に。

「中間テストが不安……」
「このまま爆死」
「ぜんちゃんの未来予知が当たりそうで怖い」

予習復習までバッチリ、とまではいかなくても、授業中は居眠りもせず真面目にノートを取っているのに、どうしてこうなるのか睦朗も不思議で仕方なかった。他の科目は酷くないが、英語だけはどうも苦手なようだ。

「和泉に勉強見てもらえば?」
「そうしようかなぁ。ぜんちゃんも教えてよ」
「めんどい。パス」
「だよねぇ」

善治は面倒見が良いわけではない。和泉の世話焼きと比べると、むしろ世話を焼かれる方が性に合っているかもしれない。昼ごはんの確保は竜介に任せっきりだし、移動教室は和泉に引きずられて行く。

「リュウ、小テスト見せて」
「はい出た〜、いっちゃんの保護者チェック!」
「毎度赤点取るやつのせいで習慣になったよ、まったく……」

ステータスを運動神経に全振りしてしまった竜介の、テスト勉強を監督するのが和泉の役目になっていた。放っておくと全教科に赤が付くため、中学生の頃は教師も竜介の親も、和泉頼みだった。どうやら高校生になっても、それは変わらないらしい。

「英単語集を見るだけでもしてくれよな」
「いっちゃんが読んで聞かせて」
「書けなかったら意味ないだろ……」
「和泉、もう一人増えたぞ」

ほぼペケが付いた小テストに「やっぱり」と「がっかり」を食らわされたところへ、善治が睦朗を連れてきた。

「まさかムツまで……」
「英語、苦手なんだよね。あ、でもリュウより悪くないよ!」
「俺より悪いやつ滅多にいねーからな!」
「なぜ自慢げなのか」

竜介ほどではないにしても、睦朗も平均以下の点数だった。これを一人でどうにかするのは、さすがの和泉でも難しい。

「……善治、」
「いやだ」
「まだ何も言ってないだろ」
「俺は面倒みない」

がし、と和泉の手が善治の肩を掴んだ。和泉も自分の勉強があるし、ふたりの面倒ばかり見ているわけにはいかない。せめてテスト期間だけでも、善治の手を借りたかった。

「面倒みろとは言わないから。一緒にいてくれれば」
「いたら結局面倒みるハメになるだろ」
「じゃあ俺らは三人でテスト勉強する。善治、一人で頑張れよ」
「そういう言い方する……」
「ムツ、悪いんだけどテスト期間中はムツんち集まってもいいか?広いし図書館より勉強しやすいだろ?」
「えっ!?う、うん!いいよ!」
「じゃあ来週から、俺とムツとリュウは、三人で、ムツんち集合してテスト勉強な」
「……和泉」

さすがの善治も、こんな仲間はずれのような状況に陥れられると不満げな顔をした。ただ、これが和泉の作戦だというのは明らかで、まんまとはめられてやるのも悔しい。
そんな善治の様子に、睦朗はなんとなく気がついていた。

「ぜんちゃんも、来てよ、うち」
「……」
「ぜんちゃんの勉強、邪魔しないようにするから、一緒にやろ!」
「ムツがそこまで言うなら、仕方ない」

結局、睦朗に押し切られたような形になった。和泉はよしよしと満足げに微笑む。それを見た善治は、心の中で白旗を振って降参した。やはり和泉は強い。


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