南部弁男子の飼い方 | ナノ




6-@.友達増えた!

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 欠席した翌日、睦朗は元気に登校した。熱は一夜のうちにすっかり下がった。知恵熱だったのだろう。慣れない生活と寂しさで、オーバーヒートしたようだ。

 しかし、今日からは友達が教室にいる。

 教室に着いたら、真っ先に和泉のところへ行って改めてお礼を言おうと睦朗は心に決めていた。和泉には方言のことも知られてしまったし、もはや緊張することもない。地方出身であることも、東京では訛りを隠したいことも、話してしまったのだ。話を聞いた和泉は他のクラスメイトには黙っていると約束してくれたし、さらけ出してしまうと気も楽になった。

「おはよう!」
「おはよう。もう体調は大丈夫?」

 和泉は既に自分の席に着席していて、一緒に登校した竜介とおしゃべりしていた。睦朗の声を聞いて顔を上げると、すっかり顔色の良くなった様子を見て安心する。つられて睦朗を見た竜介もなぜか「はよー!」と挨拶を返して、へらっと笑う。

「あ、お、おはよ!」
「いっちゃん、昨日お見舞い?行ったんだっけ?あれ、なんで休んだの?」

 思わぬ方から挨拶を返されて、嬉し恥ずかしの睦朗は、更に投げかけられた質問にしどろもどろになってしまった。和泉のみならず竜介まで話してくれるとは露ほども思っていなかったからだ。

「リュウ、どっちに質問してんの?」
「どっちも!」
「あっ、俺は熱が出て、でも風邪とかじゃなかったんだけど。」
「そーなんだ。もう下がったの?はや!野生!」
「リュウ……、お前と一緒にするなよ。知恵熱だって。だよね?嶋守くん。」
「あ、うん。そうだよ。」

 竜介は知恵熱がよく分からず、適当に頷いて話を流した。嶋守くん、と呼び掛けられた睦朗は、会話に参加できているだけでとても幸せ気分だった。改めて友達のありがたみが身に染みた。しかも和泉のみならず、その友達まで話をしてくれるので、これはひょっとしたら友達を増やすチャンスなんじゃないかと期待が膨らんだ。

「あのさ、名前、まだちゃんと覚え切れてなくて……。」
「俺?吉田だよー。吉田竜介!」
「吉田くん。」
「固いなー!竜介とかリュウで良いって!友達みんなそう呼ぶしさ。」
「えっ、あ、じゃあ、リュウって呼ぶ!」

 竜介に友達扱いされて、睦朗の幸せパロメーターはぐんと振り切れた。入学式の日の朝に助けられ、しかもこうして友達になれたのだ。不思議なところで縁は結ばれるものである。

「で、下の名前は?」
「睦朗!」
「じゃームツだな!いっちゃんもさぁ、シマモリクンとか呼んでないでムツって呼ぼうぜー?」
「呼んでー!」
「はいはい。じゃあ俺も和泉とかいっちゃんとか好きに呼んでいいよ、ムツ。」

 また賑やかなのが増えたなぁ、と思いながら和泉は笑った。静かなのは善治くらいなのだが、竜介をからかって遊ぶので当人は静かでも騒がしいことに変わりはない。その善治はどうやら遅刻らしい。もうすぐホームルームが始まる時間だが、まだ来ていなかった。

「じゃあじゃあ、いっちゃんって呼ぶ!」
「うん、どうぞ。」
「ムツってあれだろ、自己紹介で『1年3組でーす』って言っただろ!」
「ぎゃあ!!それは忘れて!」
「ちょーウケた!」

 ゲラゲラと大笑いする竜介と、顔を赤くしている睦朗を、菩薩の微笑みで見守る和泉であった。






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