7.職業は不明
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「……ありきがスーツ着てる」
学校から帰ってくると、ベランダでいつものように煙草を吸っているありきがいた。
いつもと違うのは、その服装。首元がだらしなく開いた部屋着とのギャップがあり過ぎ。
「苑くん、おかえり!」
「だだいま……ねぇなんでスーツ?」
玄関で鉢合わせたありきは、ダークスーツにシンプルなストライプのネクタイをキチンと締め、すこし恥ずかしげに耳たぶを弄っている。
「お仕事で、相手方の希望なんだ」
仕事の謎が深まるばかりだ。相手の希望でスーツを着る?どういうこっちゃ。
「いつもより出るの早いよな?」
「それも、相手方の希望でね」
「ふぅん」
相手がどんなもんかも気になるが、それより何の仕事だよ。聞いても答えてくれないなら……自分で突き止めるしかないのか。
「じゃあ、いってきます」
「おう、いってら」
大急ぎで部屋へ戻り、再び外へ飛び出した。駅方面へ向かう、あの細い後ろ姿を追いかけて。
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