ストーカーですが、なにか? | ナノ




制服を脱いで、素直になって

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桜の蕾も膨らみかけた頃、卒業式を迎えた。

正直、式自体は証書もらうだけの面白味のない行事だし。終わった後にクラスメイト達とファミレスとかカラオケに行って最後の思い出を作るのも、楽しかったけどもっと大事なことがある。

有木に卒業したって報告。

「苑!どこ行くの?」

せっかくカラオケを途中で抜け出して、玲汰がニヤケ顔で追及してくるのから逃れて帰ってきたのに、同じく卒業式を終えて早々に帰ってきていた宮がいたことをすっかり忘れていた。部屋にカバンを投げ出して、慌てて家を出ようとしたところで運悪く捕まってしまった。行き先がバレるとまずい。行く理由がバレるともっとまずい。

「ちょっと友達と遊んでくるだけ」
「えー!友達って誰々?」
「玲汰とか」
「じゃ俺も行こっかな!」
「ダメ」
「なんで?」
「なんでも」

玄関のドアはすぐ目の前なのに。このまま宮を無視して出てしまおうか。いや、ついてくるだろう多分。
万事休すか、と思ったら着信でスマホが震えた。玲汰だ。

「わり、玲汰からだわ。急ぐからまた後でな」
「えぇー、早く帰ってきてよ?」
「大丈夫だって。帰ってきたらゆっくり話せるだろ」
「……お風呂」
「分かった、一緒に入る」
「約束ねー」

18歳にもなって双子の兄弟で風呂入るとか、我ながらどうかしてると思うが仕方あるまい。宮のブラコンは兄貴にも負けず劣らず凄まじいのだから。
それより有木!……の前に電話か!
外に出てから、とりあえず電話に出た。おっせーよ、と玲汰の不満気な第一声が聞こえてくる。

「なんだよ、今取り込み中だけど」
『あ、もう有木さんとイチャついてる最中だった?』
「ちがっ!まだ家!」
『まだ、ってことは、これから有木さんとこ行くんだ』

自ら墓穴を掘ってしまった。なんというイージーミス。口が滑るにもほどがある。

「お察しのとおりなんで、切っていい?」
『どーせ宮に捕まって下手くそな言い訳するんだろーなーと思ってたんだけどなぁ。口裏合わせしといてやろうか?』
「……お願いします」
『おっけー。埋め合わせ何にするか考えとく』

持つべきものは機転が利く親友だな。今回ばかりは本気で感謝。
これでようやく有木に会える。
ピンポーン、と軽やかなチャイムが鳴ると、すぐに有木は出てきてくれた。

「おかえり」
「ただいま。お邪魔します」

有木は相変わらずふにゃっと笑って、どうぞと招き入れてくれる。このゆるゆるな顔を見ると、ちょっと安心する。

「無事に高校卒業した」
「卒業おめでとう、苑」
「ありがと」

ソファに座ると、有木が抱き締めてくれた。ちゃっかり頬にキスもされた。さすがにこれくらいでは動じなくなってきたのだから、慣れってすごい。

「制服姿も今日で見納めだね」
「そうだな」

今日来た目的は卒業報告の他にもう一つあって、それは有木からのお願いでもあった。

「その……本当に、いいの?」
「やっぱダメ」
「アッ」
「嘘だよ」
「じゃあ、あの、お言葉に甘えて」

有木の手がそっとブレザーのボタンを外し始めた。
有木のお願いというのは、高校生最後の日の制服を脱がせたい、という下心まみれのものだった。変態。スケベ。
脱いだらハイドーモつってすぐ服着せてくれるわけないじゃん。エッチ込みのお願いじゃん。
それでも了承したのは、頼み込まれると弱い俺の性分。それに、実は初めてした日から後は一度もしてないから、というのもある。
有木はキスは遠慮なくしてくるけど、その先は全くない。多分、俺に気を遣って我慢してたんだと思う。俺が散々恥ずかしがったり逃げ回ったりしてたせいもあるはず。それが申し訳なかった。

制服のボタンはいつの間にか全て外れていて、緩められたネクタイがそのまま首から下がって妙な格好になっていた。有木はまじまじとそれを眺めている。

「そんな見つめてどーすんの」
「目に焼き付けておこうと……」
「変態」

うふ、とちょっと嬉しそうに笑った有木は、露わになった胸元を静かに撫でた。有木の手の平は少し冷たいし、くすぐったい。

「制服、脱がせるんじゃなかったの?脱げかけだけど」
「脱げかけも乙だなぁ、と」

オツ、なのかねぇ。有木がいいならいいんだけど。
両手で本格的に胸を撫で回し始めた有木は、楽しそうだ。指先が乳首を掠めていくのがむず痒い。
さわさわとくすぐられるように触れていたかと思うと、指の腹で突起を転がしたり、押し潰したり、段々やらしい触り方になってくる。うっかりすると変な声が出そうだ。緊張しながら見守っていると、唐突に有木の頭が胸元へ沈み込んで、温かい湿り気を感じた。ぬるぬると皮膚を滑っていくのは舌で、指先に代わって敏感な部分を撫でていく。くるくると円を描くように乳輪をなぞったかと思えば、突起を下から押し上げたり、ぐりぐりと潰したり、吸い上げたり、好き放題だ。

「有木、待って……」
「ぅん?」
「跡付くと、困る、かも」

顔を上げた有木は、不思議そうに首を傾げた。

「ごめん、調子乗りすぎた……」
「や、ちがくて、実は帰ったら宮と一緒に風呂入る約束してて。跡付いてたら面倒事になる気がするから」

気がするっていうか、間違いなくなるんだけど。
一瞬不安げに眉を下げていた有木は、ほっとした様子を見せた後、またしゅんとしてしまった。あれ、何か気にしてる?それとも、落ち込ませるようなこと言っちゃった?

「いいなぁ、一緒にお風呂」
「え?」
「僕も、苑とお風呂、入ってみたい」
「なんだ、そういうことかよ。別にいいけど、風呂くらい」
「ほっ本当!?」
「まぁまた別の機会にだけど」
「わー!やったぁ!」

ありがとう!と思いっきり抱きついて、有木は喜びを表現してきた。はいはい、と口では軽く流すけど、こんな風に喜んでもらえるのは内心気分が良い。好きな人が喜ぶ姿を見ると、やっぱり自分も嬉しいもんなんだな。

「じゃあお礼しなくちゃ」
「お礼?んな大袈裟な……ってコラコラコラ!なに!なんなの!?」

お礼と言いながら、突然俺のベルトに手をかけるとは一体どういうことなんだ。抵抗する間もなく制服のズボンがずるずると引き下ろされ、ボクサーパンツがこんにちはした。有木は何の躊躇いもなくパンツも下ろして俺の中心を手中に収めてしまった。何が恥ずかしいって、さっきまでのやらしい雰囲気で俺の俺がそこそこ興奮しちゃってるってこと。

「本当はするつもりなかったけど、やっぱり苑だけでも気持ちよくなってほしい」
「は!?」


するつもりなかっただと?この期に及んで何を抜かすか!
ところが握られてしごかれた股間が素直すぎて、追及どころではなくなってしまった。たちまち固くなったそこを、有木は満足げに見つめて微笑む。そして先端をぱくりと口に含んだ。

「ちょっ、汚いだろ!」
「きちゃにゃくにゃい」
「っ、……あぅ」

唇に挟まれ、舌で優しく亀頭を転がされると、甘い痺れが一気に腰まで走った。フェラなんて、生まれて初めてされた。なんだこれ。こんなのすぐにイクに決まってる。
とにかく、このままではまずい。爪先までぎゅっと力を込めた。なるべく我慢できますように。
有木はすっかり俺を喉の奥まで咥え込むと、口中で俺を責め立てた。舌が竿を這いずり回り、頬の内側で締め付け、上顎に先端が擦りつけられた。触れるところ全部が熱くて、溶けてしまうんじゃないかと思う。有木のくぐもった声と、ぐぷぐぷいう水音が
やけによく響いた。

「ふ……、っあ……うぁ…!」
「ん、きもち、い?」
「っ…………ゃばい」

気持ち良すぎ、すなわちヤバい。
泣きそうなくらいだ。頭がクラクラする。
有木の目尻が少し上がって、笑っているように見えた。次の瞬間、有木の頭が大きく上下して、指も根元に絡められて搾り出すように動き始める。強過ぎる快感に、思わず有木の肩口を掴んだ。有木は止まらなかった。

「あっ、んああ……っ!」

無意識に腰がカクカク動いて、有木の喉奥に奔流を叩きつけた。有木は苦しそうに、だけど全部受け止めて、静かに口を離す。喉元が大きく上下したから、きっと飲み込んだんだろう。

「ん……苑の味だぁ、へへ」
「それ、絶対不味いだろ」
「美味しいよ?」

ぺろぺろと口の周りを舐めながら、有木は大変満足そうだった。ごちそうさまでした、とご丁寧に挨拶まで寄こして、下げられたパンツを元に戻していく。

「え、マジで?終わり?」
「ほえ?」

ズボンを腰まで上げながら、有木は間抜けな声を出した。心底不思議そうな顔で首を傾げている。本当に最後までする気はないらしい。脱がしておいて。そんな馬鹿な。

「俺、ヤるつもりで来たのに」
「やっ!?え!?あっ……ええっ!?」

口はパクパク、目はキョロキョロで、挙動不審が服着て喋っているような混乱状態だ。そんなに想定外なのか、俺のこの心積りは。

「ぼっ、僕はっ、本当にその、そういうつもりはなくて、だって、苑、嫌かなと、思って……」

別に嫌じゃないけど!恥ずかしかっただけで!
でもそれすら恥ずかしくて言えないので、これはもうどうしようもない。
ただ、必死に弁明する有木の股間が主張しているのを、俺は見逃さなかった。

「じゃ、これは?そういうつもりないように見えないけど」

つま先で、スウェットが盛り上がっているところを軽くつつくと、有木は大袈裟なくらいビクッと全身を震わせた。真っ赤な顔でしどろもどろになっている様子を見るに、反論の余地はないようだ。

「これはどうすんの?まさか、俺が帰った後に一人で処理?」
「そ、れは、その……」
「それとも今ここでどうにかする?」
「いっ今、……しても、いい、の?」

この状況でダメデースとか言ったら、俺はどんな鬼畜野郎だ。ここまできたら後には引き下がれない。大丈夫、元からそのつもりで来たんだし。
うん、と頷きで返すと、有木は一層落ち着きを失くしてアワアワし出した。両手で両頬を押さえて、乙女かお前は。

「あの、お願いがあるんだけど、いいかな……?」
「あんまり無茶なやつじゃなければ」
「足で、してほしい」
「あし?」
「うん、足で」

おっと、これは予想の斜め上を行くお願いだ。足で、とは?

「苑の足で、イきたいです」

ぐり、と股間を俺の足に押し付けられて、なんとなく理解した。なるほど、そういえば有木はマゾだった。
足で、ねぇ。上目遣いで可愛らしくお願いする内容か?

「ヘンタイだよなぁ、っとに……」
「はぁん!」

足の裏で、股間をくいっと押し上げると、有木は気持ち良さそうに鳴いた。手でする時と同じように、足で上下に擦ればいいのかな。ぎこちない動きでそうすると、有木の固くなったところがはっきりと感じ取れた。

「力加減とか全然分かんないんだけど」
「もっと……っ、強くしてぇ」

有木の潤んだ目に見つめられると、なんだか未知の扉が開きそう。別にサドじゃないんだけど、ちょっと意地悪したくなる。
こんな扱いをされても気持ち良くなってる有木が、もっとってねだるから。
そんな言い訳を思い浮かべながら、足に力を入れた。ぐっと踏み込むだけで、有木は面白いくらい体をビクつかせて快感を訴えた。

「アッ!やぁ、ん」
「はは、すげー反応。そんないいの?これ」
「いいっ、です……」

荒い息遣いの合間から、甘い声が漏れてくる。首を反らせて喉元を晒す有木は、本当に気持ち良さそうだ。何の気なしに頬へ手を差し伸べると、鈍く光るピアスが目に留まった。開けたときは痛かったんだろうか、それすら気持ち良かったんだろうか。そんなことを思いながら、頬に添えた手の先でピアスを弄んだ。リング状のそれを軽く引っ張ると、また有木の体が跳ね上がった。

「あひぃ、あぁぁ……!」
「これもイイの?」
「ん……っ、すきぃ」

素直だな。ちょっと可愛げがあるのと、もっといじめてみたくなる。
両足の裏で有木の中心を挟み込み、上下に擦った。やば、足つるかも。有木がイクのとどっちが先だろう。有木はもう、とろとろに蕩けきった恍惚の表情で喘いでいる。

「イケる?」
「はぁ、はぃ、いッ……くぅ!」
「よしよし、イっていいからな」
「あぁ……!ん、あぁん、あぁああっ!」

がくがくと震えて、有木は果てた。足の裏からどくんどくんと脈動を感じたあと、そっと離すとスウェットが僅かに湿って色が濃くなっているのが分かった。

「あー、着たまま出したから汚れちまったな」
「苑の足は?」
「俺は平気。今替えのパンツとか持ってくるよ。脱衣所にあるんだっけ?」
「あ、う、うん!ごめん、自分でやるよ」
「いいからそこで待ってろよ」
「でも、」
「有木、おすわり。待て」

犬に命令するみたいに言うと、有木は大人しくそれに従った。忠犬だな。
リビングから出て、脱衣所に向かう。間取りはウチと逆だけど、位置は分かる。前にほったらかしの洗濯物をたたむのを手伝ったことがあり、なんとなくしまう場所も覚えている。こんなところでその記憶が役立つとは。
パンツは、洗濯機のそばのボックスにあった。100円ショップに売っているような、強度に若干不安がある、たためるヤツ。有木の部屋は収納家具がほとんど無い。カラーボックスとか、プラスチック製の引き出しとか、あった方が便利そうだけどな。似たような別のボックスからスウェットの下を引っ張り出しながら、そんなことを考えた。
リビングに戻ると、有木は命令を忠実に守ってじっとしていた。

「はい、着替え」
「ありがとう。優しい苑も好き」

受け取りながら、有木はへにゃあっと笑った。何かにつけてすぐ好きとか言う。その度照れるんだけど、同時に安心感もある。有木に好かれてるっていう、確証が持てるから。

「優しくない俺は?」
「好き。でも苑はいつも優しい」
「そうか?さっきまで足蹴にしてたじゃん」
「そういうプレイだし……?それでも酷いことしないから、やっぱり優しいと思った」

有木の優しいのハードルが低すぎるだけでは。
着替える有木をソファに座って見守りながら、新しい怪我や痣がないか確認した。足にはないみたいだ。藤井さんの店で働いてた頃は、定期的に怪我をしていたから古い傷跡が残っている。

「やっぱ、痛い方がいい?」
「え?」
「SMプレイとか、俺できる気がしないけど」
「なっ!?なんで急にそんなことっ!?」
「前の仕事、辞めさせちゃったし。物足りなく思ってるんじゃないかなーって」

有木がマゾなら、きっとこの怪我も喜んで受け入れていたんじゃないか?普通の、俺に至ってはセックスしてもない普通未満の、今の状態ってもしかして満足できていないんじゃないか?時々そんなことを考えていた。

「物足りなくなんかないよ。僕、今が人生の中でいちばん満ち足りてると思うもん」

着替え終わった有木は、隣に座ってぎゅうっと俺を抱きしめた。

「ほら、今すごく幸せな瞬間」
「さっき足でイッたときと、どっちが幸せ?」
「うーん、どっちも!」
「今って言っとけよ」
「あは。でも、足でしてるときの苑、楽しそうだった」
「……マジ?」
「苑が楽しいと、僕も嬉しい。あと、ちょっと意地悪な顔の苑も好き」

その自覚がなかっただけに、驚きを隠せない。そうか俺、楽しそうだったか。確かに、有木を見てたらもうちょっと意地悪してみたくなる気持ちはあったな。

「うん、有木がその気にさせてくるのが悪い」
「僕?」
「有木がいじめて欲しそうな顔してるからいじめたくなる」
「苑にならいじめられたい」

どうやら俺は、有木の前では素直に行動してもいいみたいだ。有木は全部受け止めてくれる。俺も、有木をちゃんと受け止めたい。

「まずは縄の縛り方をマスターするか……」
「いつでも僕で練習してね」

とりあえず今日わかったこと。
有木の泣き顔は、エロい。


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