62.隣人は恋人
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学校から帰る頃、必ずベランダで煙草を吸っている。
それが隣人の有木だ。
アパートの二階ベランダから、ニコニコとこちらを見下ろしてくる有木と目が合うと、ひらひらと手を振ってくる。
それに手を振り返して、ただいまを言う。
これ、毎日の日課になっている。
「おかえり、苑くん」
へにゃっと笑って、俺を好きだと言うこの隣人は、俺の恋人だ。
朝、学校に行く前に「いってらっしゃい」とメールが届く。
夕方、学校帰りに寄ると「おかえり」と言ってキスを迫られる。
夜、コンビニに行こうとすると同じタイミングで部屋から出てきたりする。
ストーキングとセクハラは、収まるどころかエスカレートしている気もしないでもない。
言っても止めないし、かといってお仕置きだ!なんて言うとかえって喜ぶから悪質だ。
困った恋人である。
【終】
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