ストーカーですが、なにか? | ナノ




58.真赤な傷跡

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 予約が入ったと、藤井さんに耳打ちされた。お相手はあの、蛇沼さん。
 明後日は苑くんが泊まりに来る。なのに、傷だらけになるかもしれない。初めて蛇沼さんの予約を、嫌だと感じた。
 気持ちを切り替えなくちゃ。仕事だ。
 深呼吸をひとつして、指定されたホテルへ向かった。


 僕を見る彼の目は、相変わらず、獲物を見つけた獣のようだ。嬲って、いたぶって、弱りきって抵抗しなくなるまで、追い詰める。

 よりによって今日は、拘束具で動けなくなった僕を虐げたい気分らしい。黒い革とリングで繋がったそれは、僕の上半身の自由を奪った。手首と足首にも、チェーンで繋がった革ベルトが巻きついているし、視界はアイマスクによって遮られている。
床に座らされた僕の頬を、ぴたぴたと弱く打つのは恐らく乗馬鞭だろう。見えなくても、その存在を示されただけで十分な威圧だ。強く打たれたときの痛みを思い出して、体が震えた。

「久しぶりだな。元気か?」
「はい」
「そうか。じゃあ心置き無く遊べるな」

 彼は愉快そうにそう言うと、僕の胸元へ鞭を振り下ろした。ピシッと短く乾いた音と同時に、激痛が走る。

「あぅ……っ」

 焼け付くような痛みに身をよじる僕へ向かって、彼は何度も鞭を振るった。胸も、脇腹も、背中も、ありとあらゆる場所に鞭が走る。その度に、痛みが快感となって襲ってきた。
 彼は続け様に鞭を打たない。一打の痛みを、僕がしっかり感じてから、次の一撃を放つ。ゆっくりと、僕は全身を嬲られた。強弱を付けた鞭捌きで、僕の快感を確実に引き出してくる。

「だいぶ気持ちよくなってきたなぁ、有木?」
「っ、はい……気持ちいぃ、です」
「そうか。ふふ、今日はいいモノがある」

 彼は、僕を蹴飛ばして仰向けに転がすと、既に中心で勃ち上がっていたものを掴んだ。
先端に冷たい感触があった。次の瞬間、何かが僕の中に潜り込んできた。ペニスに強烈な違和感が走るけど、恐怖で動けない。尿道に何か差し込まれているらしかった。

「ぃあ…っ!あ、やっ……!」
「イイコにしていろ。ブジーは初めてか?遊びがいがあるな」

 ぬぷ、と冷たい感触が奥へと突き進んでくる。ペニスを貫く感覚に、背筋がゾクゾクした。尿道を否応なしに拡げられ、未知に対する恐怖と痛みで、床に足指の爪が食い込む。

「初めてのわりに、しっかり呑み込めたな」
「は…っあ……ぁ、」
「ほら、中に入ってるの、分かるだろ?」
「っあアアア!!」

 ずるずるとブジーを引き抜かれ、体が仰け反るほどの痛みが脳天を貫いた。おそらく蛇沼さんは手を離したのに、ブジーはまるで意思を持っているかのように、じわじわと中へ沈み込んでくる。

「せっかくブジーが挿さってることだし、今日は射精禁止だな。そうだ、アナルにも何か挿すか。何がいい?」

 まるで花瓶に花でも生けるみたいにそう言った彼は、楽しそうだ。鼻歌が聞こえてきそうなほど上機嫌な彼は、玩具の中から気に入ったものを見つけたらしい。ガチャガチャと漁る音が止まって、彼が近づく気配がした。

「今日は俺、挿れるつもりないから。コレ、代わりに咥えときな」

 膝の裏に手を差し込まれ、大きく体を屈曲させられて、恥部が丸見えになった。そして晒されたそこへ、太いものがずぶずぶと押し込まれる。たぶんディルドでも挿入されたんだろう。さっきのブジーよりは、比較的柔らかくて痛みもさほどじゃない。それでも、男性器をかたどったそれは、彼がスイッチを入れると中で暴れ出して、強い刺激となった。

「あっ!やあぁ…っ、んぁ!」
「いい眺めだな」

 再び乗馬鞭が空を切る。仰向けに転がり、みっともなく快感に悶える尻を、ピシャリと打って跡を残す。その痛みですら、僕には快感でしかない。何度も鞭で尻を打たれた。きっと熟れたように赤くなっているだろう。
 どんどん重なる気持ち良さで、雄芯は昂っていくのに、閉ざされていて精を吐き出すこともできずにいる。このままでは気が狂いそうだ。

「アッ、あぁ!ぬいて…ッ、これぇ、ぬいて…ぇ!」
「誰に向かって口聞いてるんだ?」
「あああ!ぬい、てっ、くださぁ…っ!」
「射精禁止だと言ったはずだ。ねだり方を間違えるな」

 鞭の先端がペニスを撫で上げる。射精感を煽られるのに、できないもどかしさで涙がアイマスクを濡らしていった。僕が今できるのは、口からだらしなく涎を零して、いきたいと彼に懇願することだけだ。

「ほら、言え」
「もっと…くださいっ、いたいのぉ……っ!」

 もっと、もっと、痛くしてほしい。そうしたらたぶん、射精しなくても達してしまうから。
 彼は僕の髪の毛を掴んで、顔を上げさせた。そして無防備な横っ面を、鞭の柄で思い切り殴打した。見えていない僕には避けようもなく、まともにくらって口の中に鉄の味が広がった。床に倒れなかったのは、まだ彼が髪を掴んでいるからだ。

「口を開けろ」

 鞭の柄を押し当てられ、唇をこじ開けられた。言われたとおり口を開けていると、カチャカチャとベルトを外す音が聞こえ、彼の肉棒が鼻先へ突き付けられる。

「舐めろ」

 髪を掴まれたままで、あまり自由がきかないし、見えもしない。鼻と唇で感じ取って、探るように舌を伸ばした。そんな犬みたいに浅ましい僕の姿を、彼は楽しんでいるのだろう。かろうじて鼻先や上唇に触れる程度に、肉棒の存在をちらつかせた。僕はそれを、涎を垂らしながら、必死に舐めようとして追う。動くたびに髪の毛が引っ張られて痛いし、後孔は玩具に責め立てられて、ひっきりなしに快感の波が荒れ狂うせいで、腰が揺れ、力もうまく入らない。

「はっ、あ…、んぅ、ふ……っはあ」
「 ほら、ちゃんと舐めろ」
「すみませ…っ、んん、ふぁ……」
「俺より先にイクなよ?」
「ふぁい……ッ、ん!あっ、ひあぁ!」

 先にイクなと言いながら、彼は耳を優しく愛撫し、時折ピアスを引っ張って痛みを与えた。彼が何度も僕に施したその調教は、快感に直結していた。耳殻をそっとなぞる指がピアスに引っかかるたび、ぞわぞわと背中を這い上がってくるものが全身を支配する。

「あっ、あァ…!や、め……っ!ぃああ!」
「口、サボってるぞ」
「んぶ!ぅ、んぐッ!」

 舐めろ、と言われたことを守れなかった僕の口へ、彼のものがねじ込まれた。耳への愛撫は終わり、両手で後頭部を掴んで容赦なく喉奥まで突き上げられる。歯を立てないよう口を大きく開けて、されるがままに口腔内を犯された。

「言いつけも守れないお前みたいな馬鹿、買ってもらえるだけでも有難いよな?」
「ぁ、うっ、ぐ、ぅ…っ」
「お前が、自分の気持ちいいことばっかりに夢中でいるから、俺がわざわざこうして犯してやってる。嬉しいだろ?」
「…っ、ぉご……、ぉえ、な、ぁあ、ぐ」
「全部飲め」

 ごめんなさい、と発することもできず、喉に叩きつけられた熱い奔流を受け止める。どくどくと注がれるそれを感じて、自分も絶頂に達した。喉を鳴らして強引に飲み下しながら、全身が快感でびくびくと震えていた。

「……吸い出せ」

 まだイキっぱなしの僕から、一度自身を引き抜くと、だらしなく開いた口の端に先端をぴたりと当てた。それを舌で口の中へ導いて、亀頭を唇で挟んで吸い上げる。残っていた精液が、じわじわと舌の上に広がった。
 まだ尻の間でディルドが蠢いていた。ブジーも挿さったままだ。絶頂の感覚がとめどなく続いている。このまま死んでしまいそうだ。

「よしよし。綺麗にできたな。ご褒美の時間だ」

 目隠しが取り去られた。まだ焦点が定まらず、視界はぼんやりとしている。彼はそんな僕を後ろから抱え起こした。未だに快感が全身を支配していた。

「ほら、自分のココが虐められてるとこ、ちゃんと見てみな?」

 耳元で囁く彼の声は、ひどく優しかった。
 彼は僕のペニスをそっと手の平で包み、先端を僕の方へ向けた。蛍光灯の光で鈍く光る金属が、挿さっている。彼の手はそれをゆっくりと引いた。ずるずると中が擦れる感覚、痛み。

「あっ、あ!やだ!あああ!」
「痛いか?こうやって、少しずつ動かして慣らしてやるよ」
「やあ…ッ!あっ、あぁ、あ……!」
「口より上手に咥えてる。お利口さんだ」

 もう痛みと快感の境目なんてなかった。僕は泣きながら、自分のペニスがブジーに犯されているところを見ていた。無機質な銀色が、何度も鈴口から出たり入ったりして、まるで性行為だ。彼は小刻みに動かしたり、大きく緩やかに動かしたりして、僕を壊した。

「あ……っ、はあ…、あぁ、あぁぁぁ…っ」
「こんなパンパンにして……。出したくてたまらないよな?」

 張り詰めたまま、どうすることもできないでいたペニスを、彼の指がするすると撫でた。

「はあぁぁ…!あ、ン…っ、はぁ」
「後ろも、グリグリされて気持ち良いもんな?」
「!!ぃああぁぁぁ!」

 入れっぱなしのディルドが不意打ちで動かされ、今度は後ろの穴で抜き差しが始まる。前立腺を刺激されて、また激しい絶頂がすぐに訪れた。ディルドを引き抜かれると、ぶしゅ、とわずかに鈴口から精液が漏れ出て、性器を伝い落ちる。
出 したい。もう、こんなの、耐えられない。はやく出してイキたい。

「あっ、もぉ…っ、だひ、た……ッ!あ、あ、おねっ、が…ぁああ!」
「気持ち良い?」
「ぎ、もぢっ、いぃぃ…ッ!」
「じゃあ、出していいよ」

 勿体つけるみたいに、ゆっくりとブジーが抜かれた。
 抜けきった瞬間、大量の精液がじょろじょろと漏れ出して、腹や腿を濡らした。

「あ、ああぁぁぁぁ」
「ふふっ!沢山出てるな。まだ止まらない」

 愉快そうに笑いながら、彼は後ろから僕の乳首を弄んでいる。片方の、ピアスがついたそこを摘んで、反対は指の腹でこねられて、さらに射精が助長された。

「おもらし、みたいだな」

 精液を出し切ったあと、彼は白い水溜まりに手を浸して、僕を辱める言葉を囁いた。

「残念だが、タイムアップだ」

 拘束は解かれた。
 そうして、利用時間終了の5分前きっちりに、彼はシャワーを浴び終えてホテルの部屋を出ていった。



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