ストーカーですが、なにか? | ナノ




52.白紙の日誌

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「全っ然、なんっにも、起こらないんですけどっ」
「あーりゃりゃー。ドンマイだね、苑くーん」

 玲汰はニヤニヤ笑って馬鹿にしてくる。
 放課後、日直の俺は当番日誌を書きながら、玲汰に昨日の一部始終を話した。案の定、こいつときたら面白可笑しそうに話を聞いてくれた。こっちは割と真剣なんですけど。

「ありきはプラトニックなラブを貫く主義思想なわけ?」
「いや……そんなことないと思う……」

 だってウリやってるし。とは言えないけど。

「うーん、本人に直接言えばいいんじゃない?ヤろうぜ!って」
「言うか馬鹿、言えるか馬鹿」
「そんなんじゃ、いつまでたっても先に進まねーぞ。つーか苑、そんなにヤりたいの?」
「ちっげーよ!俺はただ、有木のが大人だしそういうこと考えるんだろーなーって思っただけで!」
「でもしてこないんなら、別に苑を取って食おうとは思ってないっつーことだろー」

 む。そう言われるとぐうの音も出ない。有木が何を考えてるのか全然分からん。部屋に入れてくれるし二人きりになる時間は沢山あって、一緒にいると嬉しそうな顔してるけど、距離が一向に縮まらない。物理的に。
 時々考えるのは、もしかして仕事で性欲は満たされてるから、俺とはしなくていいのかな、ってこと。

「……俺、別に普通の友達で良かったんじゃないかな」
「自信ないってか」
「ない」

 有木が他の誰かと寝たり、俺とはしないことを他所でしてるのかと思うと、ものすごく嫌だ。仕事だって分かってても、嫉妬する。有木は、嫉妬することあんのかな。例えば、玲汰とか、学校でもサイトでも一緒で、有木といる時も話に出してるけど、なんとも思わないんかな。そりゃあ、友達と話しただけでいちいち嫉妬されても困るけど、全くされないのも、なんだかなぁ。

「まぁそんな焦らなくたって、時期がくりゃー自然とそういう流れになるんじゃね?」
「時期ねぇ……。いつ来るんだか」
「誕生日、泊まりに行ったら?」
「泊まりったって、宮も兄貴も帰ってくるのに」
「前日に泊まって、日付が変わった瞬間に一番に祝ってもらえば?」
「あー。うん。まぁ……」
「恥ずかしがるなよ。いいじゃん、付き合ってんだからそれくらいしてもらったってさ」
「うーん……」
「じゃ、俺先帰るから。全然進んでない日誌、頑張れよー」

 手元を見て、一文字も増えていない文面に思わず溜息が出た。これを終わらせて帰ると、有木とはのんびり話している時間はなさそうだ。今日は会わないでおこう。それで、ちょっと有木も、俺の気持ちの何分の一かでも、しょんぼりすればいい。



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