51.焦燥と純情
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有木さぁ、有木さぁ、有木さんさぁ!!予想通りの照れ笑いスルー決めてんじゃねぇよ!
21:38 まる
チキンレースだわー
21:40 レータ→まる
なにそれ、なにしてんの
21:41 まる→レータ
レータさんのアドバイス役に立たんかったから責任とって
21:43 レータ→まる
なしてwwww
21:45 まる→レータ
明日また学校で話す
21:46 レータ→まる
ういーwwwwww
自分の家に帰ってからツイッターで呟いたら、案の定玲汰が釣れた。もちろん有木も見るであろうこの場で、手を繋ぐどころか〜なんて話ができるわけもなく、明日に持ち越し。
ぼっすんと大きな音をたて、ベッドに寝転がった。モヤモヤする。すっきりしない。今頃いつもどおりに仕事をしてるであろう有木が恨めしい。きっと今日も、あの藤井さんの言葉を借りれば「買われてる」んだろう。「自分の時間を売って」「相手に求められれば応じる」って仕事をしてるんだろう。
「俺とはしないくせに」
買われなきゃ、しないのかよ。じゃあ、買えばいいのかよ。他の客と同じく、有木の「時間を買って」、有木に「求めれば応じてもらえる」のかよ。そんな回りくどいことしなくちゃ駄目?恋人だから無条件に、ってオプションはないわけ?
「ばーか。鈍すぎ。鈍感。ニブトンカチ」
自分のことを棚上げして、心の中でブーイングの嵐。そういえば、俺の過去で唯一の交際経験はキスもせずに終わったんだっけ。がっついてるとか、体目当てとか、そんなふうに思われるのが嫌でなんとなくできずにいたら逆効果だった。もし、有木もあの時の俺と同じこと考えて踏みとどまっているなら、俺がいいよって言わない限り進展しないんじゃないか?
「俺からじゃなきゃ駄目っすか……恥ずか死ぬな……」
ふたりきりでいて、無防備で隙だらけな俺に気が付いてくれ。有木は情事に関してはいうなればプロみたいなもんで、そんな相手にリードするとか無理だから。
「手、握ってくれるだけでもいいんだけどな……」
まだ知らない有木の手のひらの感覚の代わりに、指に引っかかったシーツの感触がちょっとだけ寂しかった。
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