46.幸福の感触
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頭がふわふわする。現実なのか夢なのか、分からなくなる。でも確かに、抱きしめた感触がある。苑くんの温度がここにある。
「苑くん、大好き」
恋人の候補ではなくなった苑くん。本当に、本当に、いいんだろうか。確かめるように、回した腕をきつくしたら、苑くんは僕の背中をそっと撫でてくれた。大丈夫だよ、って言ってくれているみたいだった。
「どうしたら、いいのかな。えっと、お付き合いって初めてだから、よく分からないんだけど」
「俺だって、男同士は初めてだし、よく分かんね」
顔を上げると、真っ赤になった苑くんと目が合った。可愛い。林檎みたい。こんなに近くにいるなんて、やっぱり夢でもみてるみたい。
「……あんまし見ないで」
「ごめん。現実味がなくて、つい」
至近距離で見つめ合ってるのに、まだ腕の中に苑くんはいるのに、目が覚めて夢でした、ってなりそうで怖い。
すると苑くんは僕の左頬をにゅーんとつねって伸ばした。
「ひゃ!」
「意外と伸びる……」
「ふえぇ?」
「これでも現実味がないと」
「いへ、ありまふ」
全然痛くない、優しい確認。手を離した苑くんは、いたずらっ子みたいに笑った。僕が腕を解いても、そのままそこにいてくれる。ああ、本当に本当なんだ。
「大好き」
「うん。知ってる」
好きって気持ちを受け入れてもらえるって、こんなに心が満たされるんだ。
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