41.不知の領域
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有木について新しく知ったこと。下の名前と電話番号とメールアドレス。
新規登録しようとして気がついたけど、有木の下の名前は知らなかったんだ。ずっと有木は「ありき」のままだったから、気にしたこともなかったけど。とりあえず「有木太里」と登録して、画面を閉じる。名前、誰が付けたんだろう。親は、兄弟姉妹は、今どこにいるんだろう。出身はどこなんだろう。まだまだ知らないことだらけだ。もっと知るためにはどうすれば。
「やっぱ話すっきゃねーよな。有木と」
メールで質問をポイポイ投げかけるのもうざいかもしれないし、お隣さんだし、直接話すのがいいだろう。俺んちには呼べなくても、有木んとこには行ける。また日曜日とかにどこかへ誘うのも、いいかもしれない。それとも有木は外出を嫌うんだろうか。人目を気にして話せないようなことも、あるかもしれない。仕事の話、とか。
そう、仕事のことももちろん気になってはいる。いつからやってるのか、藤井さんとはどれくらいの付き合いがあるのか、いつまで続けるつもりなのか、とかいろいろ。もし俺と付き合うことになったとして、その時有木は、あの仕事は続けるのかな。興味本位で根掘り葉掘り聞くわけじゃなく、ちゃんと知っておきたい。もっと知りたい。
〈今度、また有木の部屋に遊びに行ってもいい？〉
登録したばかりのアドレスに、新しく送ったメール。返事が来たのは朝になってからだった。
〈是非どうぞ！日曜日の日中でいいなら、何時でも大丈夫だよ。〉
分からないこと、少しずつ埋めていこう。
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