1.隣人は変人
---------- ----------
学校から帰る頃、必ずベランダで煙草を吸っている。
それが隣人の有木さんだ。
アパートの二階からニコニコとこちらを見下ろしてくる彼と目が合うと、ひらひらと手を振ってくる。
それに会釈を返す。
これ、毎日の日課のようになっている。
そんな隣人・有木さんは謎が多い。
まず職業が分からない。日中は家にいるらしい。夜にふらっと出て行き、明け方にふらっと帰ってくる。
あと年齢不詳。成人してるんだろうけど、20代と言われればそう見えるし、30代と言われればそうなのかと納得できる。
中性的な顔立ちでガリガリに細い。女装したらたぶん女と間違える。
そしてなぜか俺の行動が把握されている。
例えば、朝。アパートの階段下ポストから新聞を引っこ抜いてくる時にすれ違うと、「今日からテストだね。頑張って」とか言われる。
例えば、夕方。アパートの通路でばったり会うと、「喧嘩した友達とは仲直りできた?」とか聞いてくる。
例えば、夜。小腹が空いて近所のコンビニに行くと、「やぁ、君も夜食を買いにきたんだね」とかザラにある。
何で知ってるんだ。
ちょっと、いや、かなり気味が悪い。
たぶん、悪い人じゃないんだろうけど、ちょっと恐い。
変わった隣人である。
[ 1/71 ][*prev] [next#]
[目次]
[しおりを挟む]