from:不知火くん
sub:明日
――――――――――
朝食後にプール入口。
水着着てこいよ!


そんなメールが届いたのは、昨夜ベッドに入る直前。
大浴場からの帰りに交換した(させられた)連絡先はなんだか変な感じだ。

(今まで男子とアドレス交換することなんて無かったからなぁ)

呑気なことを考えつつも、あたしはしっかり水着(しかもこの夏買ったばかりの新品だ)を着てプールの入口に来ていた。

「なにこれまるであたしの方が楽しみにしてるみたいじゃん…!」

「何一人でブツブツ言ってんだ?」

「なっ、なんでもない!おはよう、不知火くん」

おはよーさん、なんて片手を上げる不知火くんは、薄手のパーカーこそ羽織っているものの、当然水着姿。

「今日は楽しませてくれるんでしょ?」

「ああ、期待しとけ。行こうぜ!」

力強く引かれた手、それと同時に高鳴る鼓動。
水飛沫の中で輝く笑顔にドキドキは加速度を増していく。
その正体はまだわからないけれど、不知火くんが笑ってくれるのは…素直に嬉しかった。


「くーっ、疲れたー!」
「午前中だけで盛大に遊びすぎた感はあるよね…」

時刻はあっという間に昼下がり。
売店で軽食と飲み物を買って、あたし達はプールサイドの木陰で休憩していた。

「高校生若いなぁ…あんなに遊んでるのに元気そう」

「大して変わんねーだろ」

「気持ち的な問題なの!」

ズコー、なんて音を立てながらストローを啜っていたら、不知火くんの視線がじっとあたしに向いていることに気付く。

「…なに?」

「いや…そういや朝言い忘れたと思ってな。水着、似合ってる」

「!!」

不意打ちの言葉に顔に熱が集まるのが分かる。
彼の視線から逃げるように背を向けたけど、うなじに音を立てて口付けられて、思わず肩が跳ねた。

「ひゃ…!何して、」

「冗談とかお世辞じゃないからな。すげー可愛い」

「わ、かった、から…くび、やめっ、」

「…なんだ、首弱いのか?」

いいこと知った、なんて楽しそうに笑っている不知火くんは、悔しいくらいかっこいい。
…ああ、これはもう。

「認めなきゃいけない、かな…」

「優?」

「なんでもない!後でかき氷食べようね、不知火くんの奢りで。それで首の件はチャラにしてあげる」

「仕方ねぇな…お姫様のお望みなら喜んでご馳走させていただきますよ、っと」

認めてしまえば、気持ちはスッと楽になる。
一歩先に進む勇気は、まだ持っていないけれど。





木漏れ日の中で気付いた想い





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